ミッキーが活躍するコミックが、1930年からアメリカの新聞に掲載されていたことをご存知ですか?この連載は、フロイド・ゴットフレッドソンによって25年もの間、毎日続けられました。
「ウォルト・ディズニー ミッキーマウスコミックス」と呼ばれるこの作品の中から、Disney DAILYでは特別に、1930年4月から5ヶ月間に渡って連載された「デス・バレーのミッキーマウス」に日本語訳をつけてお届けします!
アニメーションの中では会えない、悪者たちと勇ましく戦うミッキーがここにいます。
MICKEY MOUSE IN DEATH VALLEY
デス・バレーのミッキーマウス
ミッキー:見て、ミニー!弁護士のシルベスター・シャイスターさんだ。今日もきっと、どこか人助けに行くんだね!
シャイスター:やあ、やあ!ミニーマウスじゃないか、こりゃあ良かった!キミに素敵な報告をしようと、はるばる町から歩いて来たんだよ。一体何だと思う?
ミッキー:わかんないや!
シャイスター:ミニー、キミは古きモーティマー邸を相続する、たった1人の継承者になったんだよ。明日私の事務所で、詳しい話をしようじゃないか!
ミッキー:わあ、すごい!!
ミッキー:トゥモロー♪トゥモロー♪幸せな日になるよ!ねえミニー、キミは大金持ちだ!!
なんと、相続人となったミニー!でも…?
ミッキー:あ、ミニー。うわさ好きのクララベル・カウが来る。彼女、最近元気だから、きっとおしゃべりが止まらないよ!
クララベル:あら、まあ!お会いできて嬉しいこと!あなた、遺産の相続をするそうじゃないの。あたし良いニュースってみんなに言わなきゃ気が済まないの。モーティマーのお屋敷があなたのものになるんでしょ。あそこは昔からの資産家よね。あなた、これでチーズのバスタブだって作れるじゃない!!
1時間後―
クララベル:あぁ、うらやましい!新しい服、外国で音楽の勉強だってできるわ!あたし、歌が本当に大好きなのよ。あたしって歌手の血筋だって話したかしら?
ミッキー:まあ歌手にでもならなきゃ、食べられちゃうしね!!
クララベル:とにかく、お金持ちになっても変わらないでね。これからも、あなたを気にかけておくようにするから!じゃあ、あたしはこの辺で。おしゃべりしている時間はないのよ。またすぐお会いしましょう!
ミッキー:わあ…まるで歩く蓄音機だね!!
ミッキー:やあ!ホースカラーじゃないか!元気?
ホースカラー:ああミッキー!ミニーもこんにちは!なにか急いでるのかい?
ホースカラー:今日クララベルに会ってさ、キミがモーティマー邸を相続するって聞いたんだ。まあシルベスターのおやじには気をつけたほうが良いぜ。だいだい、遺産なんて残っちゃいないだろうけどね。
ホースカラー:だってさ、もし何か残ってたとしても、シルベスター・シャイスターが手にする前に、すでにモーティマーの息子が受け取ってるはずだよ。
ホースカラー:忘れるんじゃないぞ!遺産があるところには、あちこちから親戚がやってくるんだから!
ミッキー:ミニー、彼の言うことなんか気にしないで。キミをからかってるだけさ。彼ってね、帽子を脱ぐと必ずキツツキにつつかれるんだよ!
ミッキー:さあミニー!もうじき弁護士事務所に到着だ。そしたら書類にサインして、キミは大金持ちだよ!
シャイスターの弁護士事務所
ミッキー:よし、着いたよ!この階段を上れば大金持ちだ!
ミニー:こんにちは
シャイスター:ああ!かわいいお嬢さん、お待ちしてましたよ!
シャイスター:だが!これはプライベートな話し合いだからね。ひとりで来てくれて正解だよ!
シャイスター:親愛なるミニー。我々だけになったところで、伝えなくてはいけないことがあるんだ。キミが相続するモーティマー邸だが、あれはまったく価値がないんだ!でもね、キミは大切な友人であり、私も根っからのお人好しだから、ほんの少しの手数料で相続を放棄する手続きをしてあげよう。
ミッキー:なんてこった、あいつはミニーの屋敷を買い取るつもりだ。だから僕を追い出したのか。何がお人好しだ、卑怯者め!!
ミッキー:わあ!
ミッキー:だ、だ、だれだフォックスって??
手紙:気をつけろ!ミニーに屋敷を売らせてはならぬ!フォックス!
シルベスター・シャイスターの弁護士事務所
ミッキー:大変なことが起きてると分かったからには、今すぐ行動だ。ミニーが屋敷を売ってしまうのを止めなきゃ。いざとなったら、あいつをこてんぱんにしてやる!!
ミニー:シャイスターさん、随分と騒がしいけどどうしたの?
シャイスター:なんでもないさ!隣の整体師が施術でもしてるのさ、さあ早くサインするんだ!
ガシャン!
ミッキー:びしょ濡れだ。でも何とかミニーを助けるぞ!!
ミッキー:保安官の助けを借りて、ミニーをあのシャイスターから守らないと。あいつは自分の悪事を上手く人に押し付けてしまうヤツなんだ。
ミッキー:おっと!ちょうど良かった、保安官がいたぞ。あんなところでゲームしてる。彼に頼もう!
ミッキー:保安官!急いでください!シャイスターのやつがミニーを事務所に閉じ込めて、遺産をだまし取ろうとしてるんだ!!
保安官:ゆっくり、はっきりと話してくれんか、良く聞こえないじゃないか。これでよし!それで、火事はどこだって?
店の主人:ははは!こりゃ愉快!そりゃ靴を探すだけで2年もかかるわけだ!
シャイスターの弁護士事務所
ミッキー:やっぱり自分で助けるしかないや!あの保安官、耳はついてても聞こえないんじゃしょうがない!
ミッキー:良いこと思いついたぞ!ジャンプ台を作って、上の窓から入ればいいんだ!
ミッキー:この石を板の反対側に投げて、突撃だ!
ミッキー:さすがミッキーマウス!誰もミッキーにはかなわないぞ!
バキッ!!
ミッキー:アルジャノン、僕はミニーをシャイスターの部屋から助け出す良い方法を思いついたんだ!
ミッキー:心配しないで!どういうことかすぐわかるから!
ミッキー:わかった?
ミッキー:ヤッホー!ミニー、今行くよ!!
ミニー:やっぱりサインはミッキーに確認してからにしようかしら!
シャイスター:ミッキーなんて、ここにはおらんよ。いいから、さあ、そこにサインしろ。さもないと…。
ミッキー:ラファイエット!ここに参上!
ミッキー:何が弁護士だ!どこか遠くの食堂で配給係でもやってればいいさ!
ミッキー:気を失ったまま放っておくのも悪いから、お水でもどうぞ!!
ミッキー:モーティマー邸はすぐそこだよ。シャイスターがあんなにお屋敷を欲しがったのには理由があるはずだ。
黒い影:わかった!シャイスターさんよ、了解だ!
シャイスターの影:…そうなんだ、だからあんたのギャングたちを集めてくれ。今夜にだ!
ミッキー:ほら!モーティマー邸はその丘の上だよ。ここは「丘の上の寂れた家」に命名しよう。
ミッキーを不気味に監視しているのは、いったい誰なのか?
黒い影:シー!静かに!ヤツらこれから屋敷に入るところだ!
ミッキー:きっと素敵なお宅に違いない。シャイスターが欲しがったのも無理はないね。何かサプライズもあるかも知れないよ!!
ミニー:ミッキー、あれは何!?
ミッキー&ミニー:フォックス!
メモ「気をつけろ、命を狙われている!フォックス!」
ミニー:さあミッキー入ってみて。怖がらないで!
ミッキー:だ、大丈夫。こ、怖くなんかないさ。
ミッキー:大変だ!!シャイスターのギャングたちだ!!ミ、ミニー、僕のそばにいるんだ!ひとりにしないで!!
ミニー:ミッキー、様子を見てまわりましょう。何か思いもよらない発見があるかもしれないわ。
ミッキー:わあ!なんて綺麗なダイアモンド。新しいスーツのズボンみたいにピカピカだ!
ミッキー:ミニー!
ミニー:落ちちゃうわ!!パラシュート持って来て!
ギー!
ミニー:ミッキー!あの音は何?
ミッキー:お、音なんて聞こえなかったよ。怖がらなくて大丈夫だよ。
ミッキー:ここには何もないよ。僕らの声が響いてるだけだ。ちょっと静かにして!
ミニー:わたしは何も言ってないわ。歯がガタガタ震えてるのよ!
ミッキー:僕たちのエコーだよ、聞いてて。誰かいるのー?
ドアの向こうから:誰もいないよ!
ミッキー:ほら!!僕の言ったとおりでしょ?
ミッキー:ミニー!こんな鍵、さっきはなかったよ!きっとシャイスターのギャングたちがこの家にいるんだ。ちょっと心配になってきたな。ちょっと、お化粧なんてしてる場合じゃないよ。キミは可愛いけど、本当にのんきなんだから!
黒い影:行くぞお前たち。決められたとおりにするんだ。何としてもミニーを捕まえて、契約書にサインさせるんだ!
ミッキー:おいでミニー!怖がらせようったって、そうはさせないぞ。僕の手をしっかりつかんで、音をたてないようにね!!
ミッキー:僕らを引き離せるものなら、やってみるがいいさ!!
ミッキー:いいね、ミニー!僕がしっかりキミをつかまえているから、そのまま静かについてきて。怖がらなくて大丈夫!
ミッキー:ミニー!?
* * *
(訳:稲次信一郎)
この続きは9月29日(日)にお届けします。お楽しみに♪