ロザリオ・ドーソンとしては、彼女がアソーカ・タノとしてキャスティングされることになった経緯を説明する方法はひとつしかない。
「それには間違いなくフォースが働いていたと思う」と彼女はStarWars.comに語る。
彼女の言っていることは正しいかもしれない。2017年2月、あるスター・ウォーズ・ファンがtwitterでドーソンに、アソーカを演じてみたいかどうか、とつぶやいた。アソーカはファンの大のお気に入りだったが、その時点ではまだアニメ・シリーズ『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』と『スター・ウォーズ 反乱者たち』にしか登場していないアニメのキャラクターだ。大方が驚いたことには、ドーソンはこのツイートにはっきりとしたリプライを返した。「う~ん……そうね。はい、お願いします、かな?!」
ネット上ではこのことに気づいた人々の間で話題となり、アソーカが実写作品に登場する可能性についてファン・コミュニティではひと騒動が生じた。このドーソンの熱意は、ただただファンを興奮させた。
そして、ルーカスフィルムもこれに気づいた。
「たぶん、いつもスター・ウォーズ関係のニュースを発信している人たちがそれを見て、(アソーカを生み出したクリエーターであり『マンダロリアン』のエグゼクティブ・プロデューサーである)デイブ・フィローニに転送したんじゃないかな。彼の意見は『興味深いな。うん。ドーソンがアソーカっていうのも可能だね。じつにクールだよ』というもので、それから彼は私のアカウントをフォローしたの」とドーソンは言う。「最終的にルーカスフィルム側はスター・ウォーズのアカウントで私をフォローしたの。そして、それが善かな。「ちょっと、今、何か起きたわよね?」って感じ。ほんと、ワクワクしたわ。「起きたわよね?」って思ったんだけど、その後はとくに何もなかった(笑)。結構長い間、何も起きなかったわ」
しばらくの間、このちょっとしたファンによるキャスティングはそこで話がストップしていたが、ルーカスフィルムとフィローニはこのことを忘れていなかった。
「デイブとそのことについて話をしたことがあって、そしたら彼らは『マンダロリアン』の話をし始めたのよ。デイブは、時代的にはどうなるんだろう、って計算をし始めて、私がアソーカをやる場合の私の年齢やアソーカの状況やなんかをもう一度ちゃんと考えて、そして言ったの。『これ、実際のところ、実現可能だよ』って」
『マンダロリアン』のクリエーターでありエグゼクティブ・プロデューサーであるジョン・ファヴローは、ドーソンのことを多少知っており、彼女の出演作品を高く評価していた。だが、ドーソンによれば、ファヴローとフィローニはアソーカをシーズン1に出したいとは考えていなかった。
「でも、計画が進み始めると、そのアイデアはずっとデイブの意識の片隅にあったみたい。彼はアソーカの物語を続けたいと思っていたし、実写化のチャンスをうかがっていたのね」
フォースが引き合わせたとしか思えない偶然のストーリーはもうひとつある。
アソーカ・タノは、アナキン・スカイウォーカーのパダワンとしてジェダイのキャリアをスタートさせた。じつは、ドーソンはリー・ストラスバーグ劇場研究所に通っており、後にやはり同研究所の生徒だったヘイデン・クリステンセンと共に映画『ニュースの天才』に出演しているのだ。そう、スター・ウォーズ新3部作でアナキンを演じた彼だ。
「デイブはびっくりしたでしょうね。インターネットでいろいろ調べていたら、私とヘイデンがハグしている写真に出くわしたんだから。茫然自失といった様子で彼は言ったの。「こんなことが……? もはや運命だよ、これは」
アソーカは生きている
現在ディズニープラスで配信中の『マンダロリアン』だが、アソーカ・タノは「シーズン2第13話:ジェダイ」に登場するよりもずっと以前、2008年の『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』でデビューしている。このアニメ映画は、今や皆から愛されているテレビ・シリーズの口切りを務めた作品だ。アナキン・スカイウォーカーの弟子となったアソーカは若く、ミスも犯す。記憶に残るとあるエピソードでは、ライトセーバーを失いさえもする。しかし、彼女は物語の中で多くを学び成長した。アソーカは物語終盤までには、ヤングリングたちにライトセーバーの組み立て方を教えたり、マスターを救出したり、モールとセーバーを切り結んだりするまでになる。年配のファンは彼女の進化を楽しみ、若い視聴者は彼女と共に成長してきたのだ。
アソーカは最終的に2015年、オリジナル・トリロジーに近い時代に設定された『スター・ウォーズ 反乱者たち』に登場し、ファンにとって、映画のスター・ウォーズ・ヒーローに引けを取らない重要なキャラクターとなる。これらアニメーション作品では俳優のアシュリー・エクスタインが誇りを持ってタノの声を演じ続けてきた。『KIDS/キッズ』や『デス・プルーフ in グラインドハウス』、MCU作品群におけるクレア・テンプル役等の演技で高い評価を得ているドーソンだが、アソーカを演じるにあたっては、そのキャラクターに非常に多層的な設定が取り巻いているという事実をよく認識していた。
「アシュリーは素晴らしい仕事をしてきた。ファンが彼女についてどう感じているか、彼女がこのキャラクターについてどう感じているか、そして彼女が自身をどれだけアソーカに捧げているか、理解しているつもり」とドーソンは言う。「そして、人々が長年愛してきたこのキャラクターを実写化するのは、とても異なる感覚や空間においてであることも理解している。私としては、別のアソーカの物語として、みんなが本当に、本当に、本当に楽しめるものにしたい、と思ったの」
ドーソンのアソーカ役への興味は彼女のツイートからも明らかだが、彼女はそもそも『クローン・ウォーズ』のファンで、娘と一緒に作品を観ていた。そしてアソーカを演じることが決まると、役の準備のため『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』『スター・ウォーズ 反乱者たち』そしてサーガ全体を調べ直した。
「どこから手をつけていいのかっていうくらいたくさんの材料があった。でもそれは間違いなく自分のためになったと思う。シリーズを最初から最後までマラソン鑑賞したの、映画も含めてね」と彼女は言う。「アソーカの進化を見るのは本当に楽しかった。体つきが、表情が、声が、そして生き方が変化してゆくのよ」
こういったことすべてが彼女の役作りの糧となったが、フィローニからは思いがけない指導も受けた。彼はアソーカとの接点となるキャラクターとして、『ロード・オブ・ザ・リング』のガンダルフを参考にするよう言ったのだ。
「それらを全部組み合わせて役作りをするのは単純に面白かった」とドーソンは言う。「私はアソーカの持つ遊び心っていうのかな、つまり、彼女が小生意気に眉を釣り上げる仕草やなんかを取り入れたいと思ったの。ほら、彼女って気骨があるでしょ。やるべきことを成し遂げるためにはちょっとくらいルールを曲げるみたいな。彼女が賢いってこともすごく好きよ。そして経験を積む。彼女は本当にたくさんのことを経験するの。ティーンエイジャーとして初めて登場した時に比べるとグンとしっかりとした大人になる。私がいつも好きだったあのアソーカに、いろんなもののオマージュを投入するのは、本当に楽しかった」
『マンダロリアン』「シーズン2第13話:ジェダイ」の脚本と監督を担当したのはフィローニだ。この物語には非常にパーソナルな彼の思い入れが感じられる。というのもアソーカの物語をその始まりから紡いできたのは彼だからだ。ドーソンはフィローニからこんな話を聞いたと言う。
「彼女は一種、放浪していたの。デイブを知っているならわかると思うけど、彼は昔のサムライ映画をたくさん知っていて、それを参考ににしてる。彼は『用心棒』なんかの映画について話してくれたわ。彼女は困っている人たちを助けながら銀河をさまよっていたの」
俳優ドーソンにとって、それはまさにアソーカというキャラクターの解釈とピッタリ一致するものだった。「アソーカは形式的にもはやジェダイではなくなったかもしれないけど、私には彼女はつねに真のジェダイだったわ。彼女こそジェダイ・オーダーのあるべき姿を体現していた」
ドーソンにとってもっとも思い出深い経験のひとつ。それは役がまさに現実のものとなった瞬間だった。衣装合わせだ。
「その時の写真とビデオを持っている。私はなわとびでもしてるみたいにピョンピョン飛び跳ねてるの」とドーソン。「すごく興奮してたわ」
ドーソンは実写のアソーカのルックをアニメのそれに可能な限り近づけようと決めた。そこでとくに気になったのは、アソーカらしさを特徴付けているある部分だ。
「じつのところそれは、私が(カラー)コンタクトを着けるべきかどうかって点だった。デイブは興味深そうにしてたわ。私は前にも着けたことがあったから、コンタクトで結構な違いが出ることは知ってた。それにファンのことを考えても『着けるべきね。目は青じゃなきゃダメでしょ、やっぱり』って思ったの(笑)。で、着けてみたら効き目がすごくて、大変化。というのも、セットでは、ヘッドピースやコスチュームも装着するし、別世界にいるんだから──驚異的よ。巨大なスクリーンに囲まれてると、すべてがそこにあるって感じになるの。ライトセーバーを握ればアソーカの説明としてはわかりやすいと思う。でも、コンタクトを着けておくことで視聴者としてはスッと自然にキャラクターに入ることができる。ロザリオがアソーカのコスプレをしているのではなくて、私はアソーカそのものだったの」
さすらいのジェダイ
「シーズン2第13話:ジェダイ」で、マンドーは霧深い森林惑星コルヴァスでアソーカを探す。彼はアソーカがザ・チャイルドの面倒を見、この幼子にフォースの修行を施すだろうことを願う。だが、アソーカは冷酷非道な監督官との対決に赴く。彼女は『反乱者たち』の最終回で描かれた事柄に関係する情報を探しているのだ。マンドーとアソーカは力を合わせて敵と戦うが、彼女は最終的にマンドーを別の道へと送り出す──マンドーの愛くるしい被保護者の本当の名前が「グローグー」であることを明かした後に。そして彼女の放浪の旅はこれからも続いてゆくだろうことが示唆される。全編を通し、温厚な賢人と猛々しい戦士の間を行き来するドーソンのアソーカは、印象的かつ魅力的に演じられている。白の二刀流ライトセーバーでの立ち回りは、またやってみたいそうだ。
「要するに、アソーカになれてすごく嬉しいってこと」とドーソンは言う。「この番組が存在すること自体がクールよ。登場して、ザ・チャイルドっていう大人気キャラクターについての情報を提供する役なんてとってもイカすわ。彼女はちょっとしたカメオ出演だけど、実際には、新たにファンになった層に向けて、物語を語る上で重要な役割を果たしているのだと思う。これからみんなでザ・チャイルドの成長を見守っていくことになるわけだけど、この新キャラクターを好きになったことでファンになった人たちのためね。グローグーのおチビさんってとにかくアメージングだわ」
「『マンダロリアン』は本当に興味深い。ライトセーバーも出てこないし、今までスター・ウォーズで好きだったものもあまり登場しないことを考えるととくにね。この作品をスター・ウォーズのシリーズに持ち込むことができたのって素晴らしいことよ。これは贈り物ね。そして私はこの作品にめぐり会えたということに本当に感謝してる」
ドーソンがStarWars.comのインタビューを受けてくれたのは「シーズン2第13話:ジェダイ」の初配信日の2日前だった。彼女は自分の演技とそれがどう受け止められるかが「心配」なのだと認めている。おそらくそれは、ドーソンが結局のところ、未だひとりのアソーカ・ファンだからだろう──アソーカ役を演じることについての種々のツイートにリプライを返した女性とロザリオ・ドーソンは同一人物なのだ。
「アソーカが生きていて、私たちは彼女と共に成長し続けているんだって考えると本当に嬉しいわ。彼女はすごく特別な存在だと思う」とドーソンは言う。「私たちが愛し、その物語が語られている素晴らしいジェダイの多くは男性で、みんなは彼らが年をとっていく様を見てる。アナキンの成長物語はアソーカとは大きな違う。彼女と共に成長し、彼女やその物語と共に年をとってきた人たちは、自分自身を成長させ、進化させてきた。私たちはストーリーが教えるのとはまた違った方法で、正義と悪、善きことと悪しきことに対する複雑さを学んでるんじゃないかな。これはただのファンタジー。でも、彼女は意志や決意、大胆さや辛抱強さについて、ファンタジーを超えた何かを表現していると思う。彼女は本当に頑張り屋で、彼女のヒロイン・ストーリーは他の宇宙ではではなかなか見つからないんじゃないかと思えるやり方で進化してきた。彼女がまだ冒険を続けていて、そのことがあれこれと話題になり、未だにその世界がちゃんと存続していているのを見ることができるなんて、本当にクールよ」
ただし、ドーソンがアソーカを愛している理由はこれだけではない。
「それに、彼女ってライトセーバーをふたつ持ってるじゃない? それがいいのよね」
『マンダロリアン』の次によく視聴されている作品
Starwars.com 2020/12/2 の記事
筆者略歴
ダン・ブルックスは、ルーカスフィルムのオンライン・シニア・コンテンツ・ストラテジストでありStarWars.comの編集者、そしてライターでもある。スター・ウォーズ、ELO、ニューヨーク・レンジャース、ジェッツ、ヤンキースの大ファン。Twitterの@dan_brooksで上記の話題に関し、大いに気を吐く彼をフォロー!