日本のアーティストが手掛ける、ディズニーDXオリジナル壁紙シリーズに、造形作家・デザイナーの竹谷隆之さんが参戦! 後編は、ヨーダを戦国武将風にアレンジするにあたって苦心した点などをうかがった。

完成したヨーダの会員限定アート壁紙。ダウンロードして、拡大しながら細部まで描き込まれたアートを鑑賞してほしい。
――普段は立体物を作る指針としての絵を描くことが多いと思いますが、今回の壁紙用のイラストはそうしたデザインとはアプローチ的に違うところはありますか?
竹谷:
立体物は僕だけが造形するのではなくて、複数のスタッフで手分けして仕上げていくというやり方をしています。僕がデザインのアレンジを担当しつつ、ときどき仕上げにも関わったりしています。デザイン画は「ここをこういう形にしようね」という覚え書きみたいなもので、そんなにきちんと描いていないんです。造形しながら変わってしまってもいいという感じでして。今回のように完成された絵として制作する場合は、きちんと仕上げもしなくてはいけないので緊張しますね(笑)。
――絵を仕上げるにあたって気を使った部分はありますか?
竹谷:
今回は戦国武将絵の掛け軸というところでまとめようとしたんですが、そこにもちょっとした落とし穴がありまして。昔の日本の絵は、パース(遠近感を表現する技法)やデッサンの取り方が今とは違う感覚で描かれていることが多くて。なので、あまりパースやデッサンをうまくやり過ぎると昔の絵のようにならなくなってしまうんです。だからと言って、昔のような技法で描こうとすると、身体が覚えているせいか、パースがちゃんとしていないと気持ちが悪い。「わざとデッサンを狂わせて描くこともないだろう」と思ってしまうところもあるんですよね。そのあたりが難しいところでした。
ヨーダもあんまり昔風にデフォルメし過ぎると、違うキャラに見えてしまうかもしれないので、そういうバランスは苦労しましたね。
すでに商品化されている「名将MOVIE REALIZATION」シリーズも多様なアレンジ案の構想があった。
――「名将MOVIE REALIZATION」シリーズは、全身を鎧で包んでいるというイメージでデザイン化されることが多いですが、今回のヨーダの武将絵はそれとはまた違ったアプローチになっていますね。
竹谷:
立体物だと関節の可動を考えないといけないので、全身甲冑を着ているほうがやりやすいというのはあります。やはり、布などの素材だと関節を付けるのが難しいので。今回は、そうした部分は考えずに描くことができたのでよかったです。
スター・ウォーズのキャラクターをアレンジするのに戦国甲冑をモチーフにするという手法はやっていて楽しいですね。好き勝手に「こういうのはどうですか?」と提案する形でデザインを描いているので、今後もどんどんやっていきたいですね。
――今回のイラストを描いてみた感想はいかがですか?
竹谷:
描くキャラクターが決まったあとは、すごく楽しませてもらいました。逆に筆数を多く入れすぎてしまったほどです。一度はすごくリアルに仕上げたんですが、一緒に造形をしている人たちから「もっと昔みたいに、パースが変だったり、ベタ塗りが下手な感じのほうがいいですよ」とダメ出しされ(笑)、ちょっと修正をしたりもしました。
それから、武者絵ということで、昔風の雰囲気を出すために背景にも経年変化を感じられるようにしました。色を褪せさせたり、シミやシワを入れたり。背景の和紙のような素材感なんかもいろいろと探してこだわりました。そうした細かい部分も見てもらえると嬉しいですね。
――今後描いてみたいキャラクターはいますか?
竹谷:
あちこちで言っているんですけど、スター・ウォーズのキャラクターではアクバー提督が好きなので描いてみたいですね。
今から35年くらい前、僕は美術デザインの専門学校に通っていたんですが、「花札をアレンジしてデザインを描く」という課題がありまして。当時からアクバーが好きで、その時は一般的に「坊主札」と呼ばれる「芒に月」をモチーフに、デス・スターとアクバーを描いたりしていました。
武将は軍配や采配を持ったり、指揮する姿が描かれることが多いので、提督というポジションのアクバーもこの武将絵が似合うと思うんです。みなさんからの要望があれば、ぜひ別のキャラクターも描いてみたいですね。
竹谷氏が学生時代に描いたアクバー提督のイラスト。
2016年に開催されたイベント用に描いた色紙にもアクバー提督のイラストが。
2019年開催の東京コミコンではアクバー提督のフィギュアが実際に参考出品された。
――スター・ウォーズファンには、どのようにこの壁紙を楽しんでほしいですか?
竹谷:
イラストとしてフィニッシュする仕事はなかなかやり慣れていないので、僕の絵で恐縮です。そんな僕の絵を見てもらって、「自分だったらスター・ウォーズのキャラクターやメカをこんな風にアレンジする」というような、妄想を巡らせるきっかけにしてもらえると嬉しいですね。スター・ウォーズの世界の中で、キャラクターを利用して遊んでみるものも面白いので、自分のアレンジや発想をひろげるのに役立ってくれたら大変嬉しいですね。
ヨーダの甲冑のモチーフなどを竹谷氏が解説する前編はこちら>>
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