村人皆の協力なしに子どもを育てることはできない──とはよく言われるが、惑星アト・アティンのニールの場合、この古い格言はまさに言い得て妙、というほかない。というのも、この子を育て上げるには、最新テクノロジー、特殊効果担当のベテラン勢、スゴ腕パフォーマー・チーム、そして情熱みなぎる若き俳優1名を要したからだ。しかし、時代を超えたこの言葉がドロイドにも当てはまるなど、誰が想像し得ただろう?
『スケルトン・クルー』撮影中、渡し船の渡し守(のパペット)を肩に乗せて演技をしているファーン役のライアン・キエラ・アームストロング
つい先ごろディズニープラスの配信作品に新規参入した『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』(2024)だが、初お目見えした多くのキャラクターたちには、すでに多くのファンが付いているようだ。(「ニール・ネイション」(ニールのファンクラブ)のみなさん、がんばってますね!)
「1シーズンに作った数なら、これまでのどんな作品よりも多くのキャラクターが『スケルトン・クルー』には登場してるよ」とレガシー・エフェクツ(Legacy Effects)社の共同設立者J・アラン・スコットは言う。レガシー・エフェクツは『マンダロリアン』(2019-2023)のグローグーをはじめ、『スター・ウォーズ:アソーカ』(2023)のヒュイヤン教授やロズ=キャットのマーリー等、数多くのキャラクターに命を吹き込んできた会社だ。同社はこのたびの最新作においても、再び、ニールや「一度見たら忘れられない」キム等、ダグ・チャンおよび配下のチームがデザインした新登場のクリーチャーやドロイドに実体を与える役目を担っている──そしてまたそれだけでなく、過去の大人気スター・ウォーズ作品に登場したおなじみのエイリアンたちにも再登場の機会を与えているのだ。
一例を挙げると、しかめっ面のシスタヴァネン(種族)の海賊船長ブルータスがそうだ。これはタトゥイーンの怪しげな酒場に出没する常連客と同じ種族であるため、見覚えのある顔のひとつと言えるだろう。
「素晴らしいのはオリジナル・シリーズのキャラクターが戻ってくること。以前はチョイ役だっただけのクリーチャーだよ」とは、本作のプラクティカル(実際にある物を使った)・エフェクツ・スーパーバイザーを任じたスコットの弁。「小さいけど、長い歴史を持つキャラクターに触れられるというのは、じつにイイものさ」
忠実ではあるがどこか怖いドロイドのSM-33も、別の人気キャラクターといくつかの共通点を有している。
「SM-33は素晴らしい新キャラクターで、K-2SOを彷彿(ほうふつ)とさせるものがある。似たような美学を持ってはいるが、老朽化しており、長年遺棄されていた感が出ていて、コレが何とも素晴らしいんだ」とスコットは付け加える。
SM-33の作製
SM-33は特殊効果チームにいくつかの課題をもたらした。登場する子供たちに比べてずっと背が高いという点もそうだが、理由はそれだけではない。ウィム、KB、ファーン、ニールたちとの演技のからみで、ちゃんと本物らしく見えるようにすることが絶対的に重要だったのだ。
「子供たちが自然に反応できるよう、よりインタラクティブなものを考え出す必要があった」とスコット。「決まり文句だが、私たちの仕事は完璧な黒子になること、だ。そうすることで、監督はSM-33のパペットをまるで俳優を扱うかのように演出できる。私たちは、パペットにつねに、さも生きているかのように振る舞わせ、動きを止めないよう努めてる。パペットを操る技がなまらないようにね。さらに言えば、そうすることで、パペットとやりとりする俳優に対しても、それを仲間のように感じてもらえる効能がある」
この彼らの努力は報われる。謎めいた男、ジョッドを演じるジュード・ロウは、パペットを相手役に演技を行うというこの難しい課題を大いに楽しんだという。
「彼らは、パペットやドロイドといったキャラクターの扱いが非常に多彩だし、優れた技やコントロール能力も持ってる」とロウは言う。「パペットやドロイドとやり取りをしてるのではなくて、パペッティア(人形使い)を相手にしてるんだ。パペットを動かしたり、揺らしたり、こちらのやることに応えたり、適切なタイミングで向きを変えたり、そういうことをする人たちとのやりとり。つまり演技なんだよ。ただ、違う種類の演技だってこと」
うたぐり深いドロイドのSM-33に命を吹き込むにあたり、スコットと配下のチームはいくつかの秘策を用意した。最新のプラクティカル・エフェクトとCGの組み合わせもそうだが、ニック・フロストが前もって録音したセリフを現場で出し、俳優が実際の声を聞くことができるような工夫も行った。さらには古典的なトリックからインスピレーションを得たやり方も試された。1人のパフォーマーによって動かすよう設計されているSM-33のようなドロイドに命を吹き込むため、数多くのアイデアが投入されたのだ。
SM-33のパペットと共に立つロブ・ラムズデル(左)。『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』のオニックス・シンダーのセットにて
「プラクティカル(実際に装着する)・スーツとパペットの組み合わせを思いついたんだ。いろんな要素をちょっぴりずつのいいとこ取りだね。軽量でないといけないし、長期の使用に耐えられるよう強度も必要になる。微妙なバランスだ。SM-33の胸は実際には透明になってる。パフォーマーのロブ・ラムズデルは、胸から透かして前を見ることができるようになってる。パペットの動きに説得力を持たせるには、周囲の状況を把握しなくちゃね。ちゃんと見て、インタラクティブに掛け合う必要がある」
SM-33のパフォーマー、ロブ・ラムズデル。『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』のオニックス・シンダーのセットにて
つまり、片面がその裏面よりも多くの光を反射するという、昔ながらのマジックミラーのトリックが使われたのだ。
「外側からは金属のように見えるけど、内側からは透けて見えるんだ」とスコットは明かす。「錆びや傷がつけてあるから、完全に透けているわけじゃないけど、ロブがよろめかない程度には目視でセット内を移動できるようになってる。透明なバキュフォーム・プラスチック製で、マジックミラーみたいな鏡面塗装が施してあるんだ。パフォーマンスを最大限に引き出すため、こんな感じのトリックをいつも考えてるんだ」
ロウはその効果に驚いた。「SM-33はとくにすごかった」と彼は言う。「ロブの演出は巧みで、あるシーンでは笑いを誘っていた。序盤で33がジョッドに近づき、質問したり、小突いたり、持ち上げたりするシーンがある。私たちはそのシーンをその日のうちに撮りきることができたんだけど、パペッティアの人々とそういった高いレベルで仕事をしたことで、演技におけるまったく新しいフィールドが目の前に開かれた思いだった」
チーム・ニールがスーツを装着する
ニールに関しては、そのキャラクター・デザインがエフェクト・チームに新たな課題──単純でありながらも同時に非常に複雑な問題:どうやってそれを実現するのか?──を突きつけることになった。
子供の体型や特徴をうまく捉えるには、いくつかのシーンで実際に子供にスーツを着用してもらう必要があった。この課題に果敢に取り組んだのが若き俳優、ロバート・ティモシー・スミスで、独自のジェスチャーを取り入れた演技を披露し、キャラクターの全体的なパフォーマンスを高めるのに役立つ「表情」のキャプチャー・データも提供した。
「ロバートはどこまでできるんだろう? パフォーマーとしてどこまで耐えられるのだろうか? ロバート自身の表情と反応を捉えるにあたり、どうすれば彼の顔のすべてを表に出すことができるのだろうか? それを探るため、私たちはいろんなやり方を試してみることにしたんだ」とスコットは言う。
「『ロバートのすべてを見せる』から『ニールのすべてを見せる』までは範囲が広いが、その間のどこかに着地点を見つけるべく、私たちは衣装、視覚効果、小道具といった、他のすべての部門と協力態勢をとった。例えば、ロバートにとっても──そしてパフォーマンス・アーティストのケイシー・ボローマンにとっても──負担にならない、着脱が容易なスーツを作るにはどうしたらよいか、といったことに腐心した」
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022)でもその才能で作品作りの一翼を担ったボローマンだが、アニマトロニクス・ヘッド(外が見えるよう小さな穴が開いている)を装着する役を引き受けたのが彼女だった。ロバートのパフォーマンスを現場でじっと観察、研究していた彼女は、その後、ロバートおよびパペッティア・チームと手を取り合い、ニールに命を吹き込んでいった。
「グループは一致団結してた」とスコットは言う。「まるでバンドみたいにね。ケイシーの演技にシンクロさせるんだ。彼女が左を向くタイミングが予測できるから、それに応じて目や顔を操る。ジェイソン(・マシューズ)が目を、リック(・ガリンソン)が顔の残りの部分や胴体、耳を操った。お互いがリードしあって、それに従って動く、ちょっとした音楽ユニットになってたよ」
シームレスにシーンがつながるのはボローマンとロバートの協力関係のたまものだが、理由は他にもある。アニマトロニクス・ヘッドが悪目立ちしなかったことがそれだ。
「アニマトロニクスとロボット工学のいいところは、復活を遂げてきてることだね……ニールの頭には、じつのところサーボモーターが山のように入ってるんだが、これが無音かと思えるほど静かなんだ。以前ならありえないことだよ」とスコットは加える。「今では、キャラクターが2、3人いるシーンでアニマトロニクスを動かしても、セリフに影響することはまずないよ」
アト・アティンの学校セットでルーナ(の演者)のそばに座るレガシー・エフェクト社の共同創設者兼オーナー、リンジー・マゴーワン(左)
レガシー・エフェクト社のレガシー(遺産)
レガシー・エフェクト社にとって『スケルトン・クルー』は初めてのスター・ウォーズ・プロジェクトではない。それは同社が『マンダロリアン』の3シーズンすべてにおいて幅広く活躍した実績からも明らかだ。しかし、スコット及び配下のプラクティカル・エフェクト・チームにとって、はるか彼方の銀河に貢献する機会を得たことは、決して「当然」と片付けられるものではなかった。
「私は13歳のときにスター・ウォーズ世界に足を踏み入れたのだけど、13にして、これが自分のやりたいことだってわかったんだ」と彼は話す。「だから、スター・ウォーズ作品に携わる機会を得たことは、円環が完成した、って感じだね。新しいキャラクターが登場するときの興奮ったらないよ。部屋にいるみんなの高揚がわかるんだ。私たちはみんなスター・ウォーズと共に育ってきたからね。それが今ではそれを自分たちで作ることができる。こんなに嬉しいことはない。スター・ウォーズは本当に特別な存在さ」
『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』の全エピソードはディズニープラスで絶賛独占配信中!
『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』に関してさらに詳しく知りたい向きはStarWars.comの以下の記事をご覧あれ。
- 『スケルトン・クルー』ジョッド・ナ・ナウッド役ジュード・ロウ インタビュー
- 『スケルトン・クルー』SM-33役ニック・フロスト・インタビュー
- 『スケルトン・クルー』キャストからのご挨拶
- 『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』のサーカス・ホログラム
- 『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』クリエイター・インタビュー
- あなただけのシャドーボックスで気分は『スケルトン・クルー』
Starwars.com 2024/12/18 の記事
筆者略歴
ケリー・ノックスは「Star Wars Conversation Cards」「Star Wars Be More Obi-Wan」「Star Wars: Dad Jokes」の著者であり「Return of the Jedi: A Visual Archive」の共同著者。ダジャレはいつだってマジというスタンスだ。