『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』(2024)に出演する若手俳優たちのキャスティングについて知恵を借りたいと考えていた番組クリエーターのジョン・ワッツはリチャード・ドナーに助言を求めた。ドナーは長年にわたり映画やテレビの監督として活躍したベテランで、映画『グーニーズ』では製作・監督を務めた人物だ。ドナーは2021年に亡くなっているが、その死のわずか数週間前のこと──
「彼は金言を残してくれた。10歳の子供を探す場合、その子が単に役を演じられるというだけではダメだ、ってね」とワッツは回想する。「キャラクターの精神が憑依(ひょうい)するくらいの人間でなくてはならない。そういう俳優を探せ、と。だから、自分の頭の片隅にはいつもその言葉があった」
新共和国時代を舞台とした『スケルトン・クルー』のストーリーは、『グーニーズ』を筆頭に、ルーカスアーツの名作ゲーム「モンキー・アイランド」やアンブリン・エンターテインメントの『E.T.』、ルーカスフィルムの『インディ・ジョーンズ』シリーズ等、あの時代に一世を風靡(ふうび)したタイトル群に込められた精神や冒険心を多分に引き継いだものとなっている。
「自分たちが住んでるこの惑星って退屈な場所だ、なんて思ってる子供たちの物語なんだ」と、本作の共同クリエーターであるクリス・フォードは言う。しかし、子供たちが冒険を続けるにつれ、母星へと帰る方法は途端に困難を極める。「残念なことに、彼らはそうこうしてるうちに、宇宙海賊や犯罪者の関心を引いてしまうんだ」
(左から)ニール(ロバート・ティモシー・スミス)とウィム(ラヴィ・キャボット=コニャーズ)。『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』より
「子供の頃、『モンキー・アイランド』が大好きだった。今もだけどね。だから、宇宙海賊を出すことで、原点回帰できたんだ」とワッツは語る。本作には『マンダロリアン』(2019-2023)シーズン3からマーティ・マトゥリス演じるヴェインが引き続き登場する。新キャラクターとしてはフレッド・タタショアが声を担当するブルータスやジャリール・ホワイト演じるガンター等の悪党たちが参戦。
「アンブリンの映画は自分にとって永遠の名作なんだ。子供たちのことを真剣に受け止めてる。子供の頃に観たときも子供向けという感じはしなかった。今振り返っても、たまたま子役スターが出てるだけの、大人向け映画って感じがする」
クリエイター陣が『スケルトン・クルー』の構想を思いついたのは、彼らが手がけ、高い評価を得た映画『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)の公開よりも前だった。この作品の主人公も突如、エキサイティングな冒険に巻き込まれる若者となっている。
「私たちの多くは若い頃、やはり同じように逃避したい、あるいは人々に夢や希望を与えたいと考えてたよね」とフォード。「私たちは皆、自分たちがいるのはこの宇宙のどこなんだろう、って考えたことがあると思う。この物語ではユニークな視点──つまり私たちみんなの中にある子供っぽい好奇心──を通して銀河を探求するんだ。本作の場合、想像力豊かな夢想家、リスキーなことが大好きなやつ、腹心の友、天才的技術者といったいろんな属性の子供たちが危険に瀕する。彼らは自分たちの手に負えない状況に陥るんだ」
『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』に登場する海賊の面々:(左から)ヴェイン(マーティ・マトゥリス)、ガンター(ジャリール・ホワイト)、ブルータス(フレッド・タタショア)、パックス、そしてチェルト(デイル・ソウルズ)
このほど、ワッツとフォードは、本作の新しい予告編のリリースに先立ちStarWars.comのインタビューに応じて──ファーン、ウィム、KB、ニールを見つけた経緯、ジュード・ロウがなぜ完璧なジョッド・ナ・ナウッドなのか、そしてなぜみんながニック・フロストの声真似をしてしまうことになるのか(義足のドロイドSM-33のせいではあるが)──について語ってくれた。
『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』の登場人物:(左から)ウィム(ラヴィ・キャボット=コニャーズ)、ジョッド・ナ・ナウッド(ジュード・ロウ)、KB(キリアナ・クラッター)、ニール(ロバート・ティモシー・スミス)、ファーン(ライアン・キエラ・アームストロング)
クルーをキャスティング
本作は、ウィム&ニール、ファーン&KBという2組の親友ペアを中心に物語が展開する。また、ワッツとフォードが認めるところによれば、ティーク(『エンドア:魔空の妖精』(1985)等に登場する種族)をはじめ、長年にわたるさまざまなスター・ウォーズの物語に対するオマージュも数多く登場するとのこと。しかも、ニールはマックス・レボと同じ種族ではないのだそうだ。では話を聞いてみよう。
ウィムというキャラクターは今まで見たこともなかった広大な銀河に足を踏み入れ、目を丸くする。その際の驚きとワクワクを体現できるスターを見つけることは何にも増して重要だった。
「ウィムは夢想家で、どんな状況だろうと考えるよりも早く体が動く。ラヴィ・キャボット=コニャーズはまさにそんな感じの子さ」とワッツは笑いながら言う。「彼は頭に血が上りやすいタイプだけど、それこそがウィム。だからラヴィは完璧だったよ」
ワッツとフォードがファーン役にと探した俳優は、レイア・オーガナとよく似たある種の二面性を体現できる子供だった。
「ライアン・キエラ・アームストロングこそファーンだよ」とワッツ。「清く正しく優しい、頭の回転が早い女の子で、親が政府の役人という設定。と同時に、いじめっ子に立ち向かうタフな反骨心も持っている。そんな子を求めてた。ライアンにはそういった知性や二面性がある。彼女は素晴らしい役者で、自身の選択について非常に思慮深いんだ」
(左から)KB(キリアナ・クラッター)とファーン(ライアン・キエラ・アームストロング)。『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』より
キリアナ・クラッターが演じるファーンの親友KBも、他のキャラクターと同様、初期草稿では完成版とは多少違ったキャラクターだった。しかし、番組クリエーター陣がクラッターの演技を見るとすぐに、KBの持つ知性的な要素が固まった。
「キリアナのKB役オーディションを見たときのことは覚えている。彼女は妙なくらいに静かで思慮深かった」とフォードは言う。「ピタリ彼女で決まったよ」
そして、ウィムの親友でオーバーオールを着ているニールにはロバート・ティモシー・スミスが配された。彼の演技は役柄にわかりやすいユーモアを持ち込んだ。
「ロバートは完全にトランプのジョーカーだったね」とワッツは言葉を加える。「当初、ニールというのはかわいらしくて内気で、小さな青い象のようなエイリアンだと考えていた。でも、ロバートはいつも別の角度からアプローチしてくるんだ。彼はコメディアンだ。いつもジョークを言ったり、ちょっと面白いことをしたり、じつに愛すべきキャラさ。彼はただ、観客を興奮させたり、笑わせたりしたいんだな。そういう下地があったから、じゃあもっと、ちょっと違った感じで面白くしてみよう、ということで、ニールに少しばかりの神経質さやユニークさを加えてみた」
この役は、顔のモーション・キャプチャー、着ぐるみのパフォーマー、アニマトロニクスで動かす頭部の組み合わせからできているため、ニールに命を吹き込むには、スミスのアドリブ演技をクルー全員の協力で「追加振り付け」する必要があった。「ロバートのゼスチャーや身体性は予想をはるかに超えていた」とワッツは言う。
ジョッド・ナ・ナウッドを演じるジュード・ロウ。『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』より
ジョド登場
本作の主役となるジョッド・ナ・ナウッドというミステリアスなキャラクターは、最終的に、アカデミー賞ノミネート俳優のジュード・ロウに決定した。
「ジュード・ロウに会う前から、彼をキャスティングしたいと思ってた」とフォードは話す。「悪党っぽさとか、物語を引っ張っていく役で、しかもたまたま仕方なく子供たちと一緒にいる、という感じがほしかったんだ」
幸運にも、ロウはこのことに全面的に賛成した。
「初めて彼と電話で話したときのことを覚えてる。彼はキャラクターを掘り下げ、ニュアンス豊かに、そしてリアルに演じたいって興奮してた」とフォードは加える。「彼はたくさんのアイデアを持っていたんだけど、そういうことを話していて彼がスター・ウォーズの大ファンだと知ったよ。これは天からの贈り物だね」
ロウは、パペットのクリーチャーやエイリアン、ドロイドといったさまざまなものを相手役に、演技の新境地に挑んだ。
「ジュードは小さなハンド・パペットを相手にしているんだけど、本当にこれまでになかった類の演技が引き出されていると思ったよ」とワッツは語る。
SM-33を演じるニック・フロスト。『スター・ウォーズ スケルトン・クルー』より
メイン・キャストの最後を飾るのは、新登場のドロイドSM-33の声を務めるニック・フロストだ。加えてファーンの母親のファラを演じるケリー・コンドンとウィムの父親のウェンドルを演じるトゥンデ・アデビンペも脇を固める。
「撮影現場でドロイドがニックの声で話せるよう、彼のセリフの多くを事前に録音しておいた」とワッツ。「他の俳優たちにとって、これは本当に役立った。ニックはギャグのタイミングが絶妙で、みんなはこれでSM-33のトーンと雰囲気を理解することができたんだ」これまでの他のドロイドと同様、SM-33にも独自の個性があり、これから先々で起こる難局、危局だらけの冒険譚にユーモアや軽快さを持ち込んでいる。「でも現場で新しいセリフが追加されるたびに、各エピソード監督が頑張ってSM-33の声真似をして、セリフをあてていた」のだと、番組クリエーターたちは笑いながら付け加える。
(左から):ニール(ロバート・ティモシー・スミス)、ウィム(ラヴィ・キャボット=コニャーズ)、KB(キリアナ・クラッター)、ファーン(ライアン・キエラ・アームストロング)、ジョッド・ナ・ナウッド(ジュード・ロウ)。『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』より
銀河への新たなる参入
本作の雰囲気をどのようなものにするか。この点に関し、ワッツとフォードは、彼らの人格形成期に多大な影響を与えたアンブリン映画に加え、『プレデター』(1987)のスリルや『太陽の帝国』『ナビゲイター』のシリアスなビートを物語に持ち込んだ。まずクリエイター陣が行ったのは独自の視点とストーリーを見つけること。それをレンズとして使い、スター・ウォーズ銀河をそのレンズを通して見るようにした、と彼らは説明する。
「それは私たちが真っ先に、そして本能的に行っていたこと」だとフォードは言う。「その後、スター・ウォーズで脚本を書く方法についてエグゼクティブ・プロデューサーのジョン・ファヴロー及びデイブ・フィローニと話し合ったとき、自分たちが好きなものを取り入れたらいいというアドバイスをもらった。スター・ウォーズだけをやるなんてことは無理なんだ。それでは猿真似になってしまう。ジョージ・ルーカスがやったことをやろうとしているわけだけど、彼だって(1930年代の映画シリーズの)『フラッシュ・ゴードン』や黒澤映画をやろうしてたわけだからね」
「デイブがジョージ・ルーカスと交わした会話や、彼が『スター・ウォーズ』から受けた影響について、デイブと話ができたのはじつに興味深い経験だった」とワッツは加える。「おかげで、スター・ウォーズ世界にアプローチするための正しい道筋を心の中に開くことでき、正しい方向に向かっているかどうかを知ることができたよ」
クリエイター陣はまず下準備として、自分たちのお気に入りの冒険物語に加え、ルーカス自身が影響を受けた作品群を振り返ってみることにした。
「1920年代から30年代にかけての海賊モノの連続活劇やなんかをたくさん見直した」とワッツは言う。これは最初の予告編に見られた閑静な郊外の景色と対比的に描写される要素だ。「銀河は危険で恐ろしい場所あると同時に、平和で退屈でもあるという緊張感を見せることが重要だった」と彼は付け加える。
また、『スケルトン・クルー』には、他の子供向け冒険物語へのオマージュが散見されたり、あるいは『マンダロリアン』や『スター・ウォーズ:アソーカ』(2023)と同様、新共和国時代を舞台としていることもあって、スター・ウォーズ作品に詳しければ楽しめる「ちょっとした気付き」が仕込まれているが、本作は、別にそんな細かいことを知っているマニアでなくても、充分に楽しめる作りになっている。
「素晴らしいのは、なにも知らなくていい、ということなんだ」とワッツは言う。
「そう、みんなにはワクワク、ドキドキして楽しんでもらいたい。それがスパイダーマン・シリーズにおけるジョン(・ワッツ)流のアプローチだった。スパイダー・ウェブでビューンとスイングするのは楽しいし、劇的なことや悲しいこともたくさん盛り込まれているけど、とにかく楽しんでほしいってこと」とフォードもワッツの意見に同意する。そしてこんな冗談も──
「スター・ウォーズについてなにも知らなくても大丈夫。ただし、オートラン(マックス・レボに代表される青い象に似た種族)に腕はあるのか否かっていう細かい知識は必要だけどね」マックス・レボ論争はいまだに続いているが、たしかなことがひとつだけある。それはニールはオートランではないということ。彼に──そして他のクルーの皆に──会うのが本当に待ちきれない!
『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』で共にクリエーターを務めるジョン・ワッツ (左) とクリス・フォード (右)
Starwars.com 2024/11/1 の記事
筆者略歴
StarWars.comのチーフ・エディター、クリスティン・ベイバーは「Star Wars: 100 Objects」や「The Art of Star Wars: The High Republic」をはじめとする数々の書籍の著者であり──そしてご存知の方もおられようが──「This Week! In Star Wars」の主催者でもある。その尽きることのない好奇心ゆえ、どんなときもあとひとつだけ質問したくてウズウズしてしまう、SF全般を得意分野とするナード(オタク)の彼女はサイ・スヌートルズの大ファン。ぜひInstagramにアクセスし、@KristinBaverをフォローしてほしい。