マーク・スペクターはどの程度壊れているのでしょうか? コンスによると、彼は3番目の人格が潜んでいることに気づかないほど壊れてしまっています。そして、その彼こそ最も危険な人格なのです。ついに、ジェイク・ロックリーを紹介する時が来ました。
マーベル・スタジオ『ムーンナイト』の第6話「神々と怪物」は怒涛の展開で終わりを迎えましたが、まだもう一つ驚きがあります。このエピソードのエンドクレジットシーンで、コンスはマークをアバターとして失うことを実は心配していなかったことが明らかにされました。なぜなら彼にはジェイクがいるからです。そしてジェイクは、マーク(またはスティーヴン)が決してやらない汚れ仕事をすべてやってのけるのです。
ジェイクの姿を見るのは今回が初めてかもしれませんが、彼の存在が示唆されたのはこれが初めてではありません。屋上でマークとスティーヴンが気を失った時に体を操り、2人が病院で見た3つ目の石棺の中に潜んでいた人格はジェイクだったのです。
「ジェイク・ロックリーに関する言及やヒントをファンが探し求めることは最初からわかっていました」と、脚本責任者のジェレミー・スレイターは語ります。
製作スタッフは、マーベルの最高のファンたち、そしてコミックスをよく知るファンたちが、彼を指し示すものを探すだろうと考え、すべてのシーンを分析するようなファンを驚かせる心配はしないことにしたのです。むしろこのキャラクターを全く知らない他の人たちに焦点を当て、ムーンナイトの物語を初めて体験する人たちにも満足してもらえるような謎解きにしなければいけないと認識していました。
スタッフ全員による完全なチームワークと称し、スレイターは次のように続けます。
「私の脚本家チームはもちろん、監督やプロデューサーたち、そして最終的にはケヴィン・ファイギまで巻き込んで、どれだけのヒントをちりばめるか、ファンをどれだけ満足させられるか、ヒントが多すぎるのか、あるいは、少なすぎるのか等をひたすらバランスをとりながら考え続けました」。
第1、3、5、6話の監督モハメド・ディアブと、第2、4話の監督ジャスティン・ベンソンとアーロン・ムーアヘッドは、ジェイクが体を乗っ取る瞬間を演出するために、撮影監督と密接に協力しながら撮影に臨みました。作中に度々鏡が登場することはご存じでしょうが、それらの多くが3重になっていたことに初見では気付けなかったのではないでしょうか。第1話「もうひとりの自分」までさかのぼると、カーチェイスの後、スティーヴンがベッドで目を覚ますシーンで「鏡の(分割)ショットがあり、そこにはかろうじて3つ目の反射があるのです」と撮影監督のグレゴリー・ミドルトンは指摘します。
第2話「スーツ召喚」について、ムーアヘッドは「(マークが)エピソードの最後にピラミッド型の鏡に向かって会話していますが、実は鏡の面が変わるごとに、だんだん壊れていくことに気づくと思います。マークが蹴って壊した3番目の面は彼の怒りを表していて、3つ目に気をつけろという小さな小さなヒントなんです」と説明します。
第3話「エネアドの決断」では、ジェイクの存在についてさらなる手がかりが得られます。カイロを駆け抜けるマークとスティーヴンは、一体誰が体を支配し、血生臭い行為を行っているのかわからず混乱してしまいます。ミドルトンはこのシーンについて「モハメドは、ジェイクを大変残酷な謎の存在として描きたがっていた」と話します。
そして第4話「アメミットの墓」では、スティーヴンとマークが共に冥界の病棟内を探索する中で、謎の3つ目の石棺に遭遇します。ベンソンとムーアヘッド2人ともが「あれはジェイクのつもりです」と明かします。
「我々は意図的に種をまいていました」とベンソンは詳しく説明します。
「ムーンナイトの公式設定をよく知らない人にはあまり意味のないミステリーのように見えるようにしました。でも棺桶を見れば、超自然的なものや悪魔的なもののように感じられるような動きや音が見られるのです。ただ冥府の化け物が出てくるわけではないような感じにもしました。結局人が出てくるのですから。激しい音ととてつもなく危険なものが入っているような雰囲気だけで、とても危険なものが中に入っているのではないかと思わせられるようにしました」。
そしてついに最終話で、アーサー・ハロウをシェンキェヴィチ病院から連れ出しにきた謎の人物こそジェイクなのだと、時間をかけて明かされます。
「ビンゴルームでのシーンでは、謎の男(ジェイクが)入ってくるときに、彼が見えそうで見えないように撮影しました」とミドルトンは話します。
「それから、彼の手が映ります。彼が去っていくときの手の動きも邪悪に見えますね。そして彼が去る瞬間はグラス越しに撮影することで、彼の姿がよく見えないようにしました。すべてわざとシーンを引き伸ばすために行いました。ジェイクの登場を待ち望んでいた方々にはずっとワクワクしてほしかったのです」。
ジェイクはこのシーンでたった2文しか話しません。しかも両方スペイン語で。しかし、見ている人の背筋を凍らせるには十分でした。作中ずっと2人のキャラクターを演じ続けた主演のオスカー・アイザックは、ジェイクを「本能的」に演じられることにワクワクしていたといいます。
「私はただ原作に忠実なキャラクターを演じるのではなく、自分らしい何かを加える機会を見出しました」とアイザックは話します。
「もし一セリフしかないのなら、スペイン語でやりたいと考えました。マークとスティーヴンがなかなか足並みのそろわないコンビなのに対して、ジェイクには何か不吉な支配力のようなものがあります。2人のキャラクターを演じたあとに感じた、他にはなにがあるんだろうというワクワクを生かした演技ができた素晴らしい機会でした」。
ディアブはジェイクが「ラテン系」のキャラクターであることを大変気に入っていた様子で、彼がハロウの車いすを押しているとき、グアテマラの讃美歌を口笛で吹いてさえいるのです。視聴者はジェイクの数分間の登場だけで、「マークとは違う。何か違うものが来る」とはっきり分かるはずです。さらにディアブは「全く背景の違う、全く新しいキャラクターで何ができるのか見てみたいです」と話します。
「オスカーがジェイクとして登場した瞬間、怖かったです」とプロデューサーのサラ・ゴーヘルは付け加えます。
「でも彼の演じるジェイクはスタイリッシュで、きっと出会ったら「あなたがジェイク・ロックリーなのね」と恐怖と同時に魅力を感じてしまうでしょう。オスカーは素晴らしいものを引き出してくれて、キャラクターを現実的で説得力のあるものにしてくれます。彼が今後ジェイクをどう演じようと、我々は受け入れるでしょう」。
ジェイクの存在が明かされた今、彼をもっと見たいと思った人はシリーズをもう一度最初から見返してみると良いでしょう。
スレイターは、最後にこう話します。
「2度目の視聴で、全ての謎が解決すると思います。いくつかの謎が最初から目の前に現れていたことを感じてほしいです。それがずっと我々の目標で野望でした」。