ピクサー・アニメーション・スタジオが贈る短編映画には、クリエイターが長編作品同様の技術とめいっぱいの遊び心を込めた珠玉の作品がいっぱい。制作秘話や作品に込められたメッセージをご紹介します!
ピクサーの原点は短編にあり
ピクサー・アニメーション・スタジオの制作の原点を知る上で欠かせない初期短編の数々には、こんなものがあります。1984年、当時まだ発展途上だったコンピュータ・グラフィックスを使用して作り上げた『アンドレとウォーリーB.の冒険』(1984)。
人間の赤ちゃんと共存するブリキのおもちゃの宿命を描いた『ティン・トイ』(1988)、スノードームのなかで、外界に憧れる雪だるまの悲哀をユーモラスに描いた『ニックナック』(1989)。
これらの作品は、私たち人間が普段、生活している世界を、別の何かの視点、例えばおもちゃやモノの視点から見るという、ピクサーならではの世界観の原点ともいえるでしょう。そしてついに、1995年、世界初のフルCG長編映画として、大人も子どもも魅了する長編映画『トイ・ストーリー』が生まれるのです。
『ルクソーJr.』(1986)も、ピクサーを語る上で欠かせない作品です。背の高い卓上ランプ(父)と小さな卓上ランプ(息子)が繰り広げる父子の物語。2つのランプと2つのボールの動きを追った、たった2分の映像が、これほどまでに愛らしく微笑ましく共感を呼ぶなんて。ここにこそ、短編というジャンルの可能性が詰まっているような気がします。同作の卓上ランプは、「PIXAR(ピクサー)」のロゴの"I"の部分としても、おなじみですね。
大好きなあの映画の番外編も
ピクサー・ショート・フィルムの魅力のひとつは、皆が大好きな長編映画のユニークな番外編が見られることでもあります。
『マイクとサリーの新車でGO!』(2002)は、『モンスターズ・インク』のマイクが自慢の新車にサリーを乗せたところ、思わぬトラブルが続出して、まあ大変!というドタバタ劇。
『ニセものバズがやって来た』(2011)は、ファーストフード店のオマケとして、ショーケースのなかでくすぶっていた『トイ・ストーリー』のおもちゃのバズ(約8センチ)が、本物のバズと入れ替わることによるドラマを描く、ウィットに富んだ作品です。
人気脇役キャラクターが主演するスピンオフ!
また、本編では脇役であるものの、実はファンの多い人気キャラクターのスピンオフ作品も見逃せません。
『ジャック・ジャック・アタック!』(2005)は、『Mr. インクレディブル』のインクレディブル・ファミリーの赤ちゃん、ジャック・ジャックが、ベビーシッターを超能力で振り回した挙句の果てを描いたコメディ。
また、『トイ・ストーリー3』からは、心待ちにしていたハワイ旅行に行けなくなり落ち込むバービー&ケンのために、ウッディたちが一肌脱ぐという、仲間思いの後日談『ハワイアン・バケーション』(2011)。
『カールじいさんと空飛ぶ家』からは、本編でカールじいさんを施設に連れて行こうとする2人のおとぼけ看護師、ジョージとAJのその後を追った『ジョージとAJ』(2009)が生まれています。
クリエイターたちのパーソナルな物語
共感を呼ぶ、パーソナルなエピソードや思い入れは、ピクサーが大切にしているものでもあります。それを象徴する短編が、『ボクのスーパーチーム』(2015)と『Bao』(2018)の2本です。
『ボクのスーパーチーム』は、ピクサーのクリエイター、サンジャイ・パテルが、父が崇拝するヒンドゥー教の神々と、幼少時代の自分が夢中になったヒーローたちをブレンドさせた作品。長い間アイデンティティを模索していたパテルは、コミックやアニメーションというアートを作り上げる過程に、自分の内面を開放し、父との関係を深めるセラピー効果があったといいます。
一方の『Bao』は、中国系カナダ人女性クリエイター、ドミー・シーが、箱入り娘だった自分とヘリコプター・ペアレント(ヘリコプターのようにわが子の頭上を旋回する過保護な親)だった自身の母から着想を得たもの。一人息子が巣立ち、空の巣症候群(子どもが独立したり、結婚したりしたときに、親が感じる寂しさと、それによる不調)になった母と、その母が作る肉まんから変身した赤ちゃんが映し出す母子の関係性が、共感を呼んでいます。
これらの短編は、観客にとって面白い作品であることに加え、ピクサーのクリエイターたちの学びの機会ともなっています。ピクサー長編映画の監督の多くは、こうした短編を製作する過程で得たノウハウや経験を生かし、世紀のヒット作を生み出しているのです。
短いからこそ響く、大切なメッセージ
ピクサー・ショート・フィルムには、反目しているように見えるような者同士が結ぶ絆を描く作品が多いのも特徴です。
『ワン・マン・バンド』(2005)は、チップが欲しいストリート・パフォーマー2人が、1人の客のチップをめぐって演奏合戦を繰り広げるなか、その客が思わぬ行動に出るという物語。
『マジシャン・プレスト』(2008)は、ニンジンが欲しくてたまらないウサギと、マジックを成功させたいマジシャンの攻防戦。
『デイ&ナイト』(2010)では、お互いのことをうらやんだり、疎ましがったりしてきた"昼"と"夜"が、お互いを理解しようと歩み寄るだけで、豊かな1日を過ごせることを教えてくれます。
『月と少年』(2011)は、小さな星で埋め尽くされた月面を、ほうきで掃除しているように見える少年と、何かといがみ合う先人たち2人の物語。そんな3人を団結させる、思いもよらないエンディングに心があたたまります。
『LOU』(2017)は、いじめっ子と、落とし物&忘れ物ボックスの主である不思議な生き物、ルーの物語。実はさみしがり屋だった少年の過去と気持ちを知ったルーは、ある方法で、彼に素直さを取り戻させます。
『南の島のラブソング』(2015)は、海のなかでひとりぼっちの火山が、仲間を求めて歌い続けるなかで、海中の火山と出会い、ひとつになるというハートフルな物語です。
主人公が人間でもモノでも概念でも、対極するもの同士の歩み寄りと絆を映し出すピクサーの"ハッピーエンディング"には、映画を観た直後だけでなく、人生を通じて思い出したいメッセージが詰まっているのかもしれません。ピクサーの技術とハートにあふれる短編のなかから、あなたのお気に入りを探してみてくださいね。
*本記事の作品公開年はアメリカ公開の年を記載しています
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