世界中で愛され、知らない人はいない妖精ティンカー・ベル。この妖精がアニメーションとして誕生する時、モデルとなった女性がいました。彼女の名はマーガレット・ケリー。今年(2016年時点)で89歳の誕生日を迎えます。
そもそもティンカー・ベルの動きの参考用に実写で撮影していたことはご存知でしょうか?マーガレット・ケリーがパントマイムで演じたのです。『ピーター・パン』(1955)では一言も話さないけれど、元気いっぱいの妖精ティンカー・ベル(愛称はティンク)。アニメーターたちは、ティンクの動きや見え方のお手本として実際の女優を起用し、彼女の動きを見ながら描いていきました。
なぜ、わざわざ人をモデルにして描くのか。それは、アニメーション制作当初は、動物アニメに専念していたので、人の動きを描くことに慣れていなかったからです。
ウォルト・ディズニーは『白雪姫』(1937)のアニメーション制作について、次のように語っていたことがあります。「人間の立ち方、歩き方、頭の動かし方を知らない者はいない。その動きを再現できなければ、説得力のある映画は作れないだろう」。
ウォルトが言うように人の動きを実体化し、ティンカー・ベルに命を吹き込むことは、とても難しい問題でした。
ティンクの身長はたった10センチ足らず。彼女の身体の作りは完全に人間と同じですが、とても小さいので、物体との交わり方は現実からかけ離れたもだったのです。
そこで、人間に似た小さなキャラクター“ティンカー・ベル”のための、完ぺきなモデルを見つけることが必要不可欠だったのです。アニメーターのマーク・デイヴィスは、ティンクを描いた本「Tinker Bell: An Evolution」の中で、“ティンカー・ベルは鈴のような音を出しキラキラ輝くけれど、彼女の身体が表現しているのは、プリプリっている女の子なんだ”と言っています。
その後、ティンカー・ベルのデザインは半分子供、半分大人のようになっていきました。子供のほうはキャサリン・ボーモント、大人のほうはマーガレット・ケリーをベースに描かれました。ケリーは、怒りっぽい妖精の感情や態度をとても自然に演じました。
ケリーは、“言葉を発しない10センチ足らずの妖精をどうやって演じるか”悩みに悩みました。そして後に伝説となるオーディションで、手鏡の上に着地し自分のおしりの大きさを見てショックを受ける、というティンカー・ベルの有名なシーンをパントマイムで演じたのです。
「俳優やアニメーターたちが『何か可愛いしぐさはないか』と考えていた時に、『あの動作を使いたい』って誰かが言ったんだよ」と、マーク・デイヴィスはその時のことを語っています。
それから、アニメーターたちはケリーの個性を積極的に活かすことにしました。一方で、ケリーは当時ティンクを演じることについてどう考えていたのでしょう。自身の自叙伝の中で「私は12歳のおてんば娘にコミカルな感覚を加えたの」と答えています。彼女は結果的に、引き出しの鍵穴におしりがつっかえてイライラするティンクといった、人気のシーンも生み出しました。この撮影では、ケリーに合わせて大きな鍵穴が作られ、彼女自身が実際に通り抜けようともがいていたのです。
多くの人がアニメーションという空想の世界に魅了されていましたが、当時アニメーションの制作には実写のモデルを必要としていました。ケリーの的確な実演がなければ、ティンカー・ベルはこれほど愛される妖精にはならなかったでしょう。
その結果、アニメーションが公開された後は、アニメーションがリアルを引き立たせました。マーガレット・ケリーとティンカー・ベルは、『ピーター・パン』を始め、数多くのTV番組へ出演したり、ティンク自身のシリーズ作品ができるまでに成長したのです。
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