「スター・ウォーズの内部機密」はStarWars.comがお送りする特集企画のひとつ。Lucasfilm Story Group(ルーカスフィルム・ストーリー・グループ)のエミリー・シュコウカニのここでの任務は、はるか彼方の銀河を可能な限り調査し、一般にはわかりにくいスター・ウォーズ関係の伝承や整合性についての知見を深めること。今回エミリーが探求するのは、みんなの大好きなあの暗黒卿の生命をつなぎとめている装置についてだ。
1977年の『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の公開以来、映画ファンはあの黒いスーツに身を包んだ悪役を謎に思い、ずっとその正体を知りたがっていたが、私たちがその答えにたどり着き始めるのは、1999年に新3部作が開始されてからのことである。

暗黒面に堕ちていたジェダイ、アナキン・スカイウォーカーは惑星ムスタファーでかつてのマスター、オビ=ワン・ケノービと対決し、致命傷を負う。そして、その直後に、新たに皇帝となったパルパティーンによって救い出される。これが2005年公開の『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』での展開だ。アナキンはこの戦いで、両脚および、生身のままだった片方の腕を失い、体の残りの部分は(おそらく最大)4度の火傷(※)に見舞われ、さらにそれらの影響により内臓にも大きなダメージを負う。これらの怪我は治療を受けなければ確実に命を落とすほどのものだった。そしてこの「治療」がアナキンを──40年以上前に最初にファンが目撃した──体の半分を機械に変えたダース・ベイダーへと変貌させたのである。
(※日本では火傷はI~III度の3段階分類だが米国では4段階)
ベイダーが命をつなぎとめるためにはスーツが必要であることは明らかだが、では、このスーツにはどのような機能があり、どのような方法で彼を生かし続けているのだろうか。



ヘルメットはスーツの最重要部位だ。それが果たすもっとも明白な役割は、ベイダーの呼吸を補助することだが、じつはそれだけではなく、さらに複雑な機能を有している。
ヘルメットは3つのパートから構成されている。保護ネック・ゲートル、メインのマスク、および外殻だ。
ネック・ゲートルはベイダーの首を支えるためのもので、栄養素を送り込むチューブが内蔵されている。またゲートルには、ベイダーを象徴する、あの低音ボイスを処理、発音する装置が組み込まれている。マスクはヘルメットにおけるもっとも複雑なパートだ。ここにベイダーの呼吸器系が存在するからである。弱った肺に対する空気の出し入れに関してはここで補助を行っている。レンズ部はベイダーの損傷した眼を助けるもので、弱った視力に対応して色を調整し、さらには視野を拡大する能力がある。マスクにはこれらの通常機能に加え、体温調節を目的とした空気排出能力も備わっている。3つ目の、ベイダーをベイダーたらしめている象徴的形状のヘルメットの外殻だが、これには、上記で説明した生命維持に必要な機器群をまとめて所定の位置に磁気ロックし、固定する役割がある。



ベイダー・スーツの頭部以外のほとんどは、弱って機能不全になりがちなボディを保護するためのプロテクティブ・マテリアルで構成されている。彼が装着しているリブ付きの黒いスーツは、サイボーグ義肢をカバーする多層構造の生地からできている。さらに、胸当ての装甲は損傷した胸を、プラストイド・ガードルは腹部の臓器をそれぞれ保護している。胸当ての真下にあるコントロール・パネルのボタンと、腰周りに固定されているシステム・ステータス・ベルトを除き、この黒光りするスーツには黒以外の色を見ることはほとんどない。パネルとベルトのふたつはどちらも、ヘルメットに内蔵されている重要な生命維持システムを監視および調整するために使用される。ただし、パネルの各ボタンの機能に関しては謎のままだ。

最後になるが、シスの暗黒卿のスーツは、あの黒いマントがなければ完成形とは言えないだろう。シス卿であってもスタイルというものはやはり重要なのである。
ダース・ベイダーのスーツについて新しい知見は得られただろうか?
Starwars.com 2021/4/13 の記事
筆者略歴
エミリー・シュコウカニはルーカスフィルムのジュニア・クリエイティブ・エグゼクティブ。彼女の仕事はスター・ウォーズ銀河の伝承や整合性をきちんと維持するためのサポート。エグゼクティブも時々はStarWars.comに寄稿してくれるんです!