「スター・ウォーズの内部機密」はStarWars.comがお送りする特集企画のひとつ。Lucasfilm Story Group(ルーカスフィルム・ストーリー・グループ)のエミリー・シュコウカニのここでの任務は、はるか彼方の銀河を可能な限り調査し、一般にはわかりにくいスター・ウォーズ関係の伝承や整合性についての知見を深めること。今回の記事でエミリーが扱うのはおなじみのマンダロリアン・アーマーだ。
マンダロリアンが装着するアーマーは、ボバ・フェットが『The Star Wars Holiday Special(スター・ウォーズ・ホリデー・スペシャル)』や『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』で世にそのカッコよさを広めて以来、ずっと私たちを魅了し続けてきた。謎めいたこの賞金稼ぎ──ベスカー合金のアーマーに身を包み、今やマンダロリアンの象徴となったTバイザー付きヘルメットをかぶり、そしてもちろん忘れてはならない定番のジェットパックを背負ったその姿──はクールそのものだったのだ。この「最初の」マンダロリアンがSWファンのお気に入りとなったのも当然の成り行きである。40年以上が経った今でも、私たちはマンダロリアンとそのアーマーについてさらに多くのことを学び続けている。
ラルフ・マクォリーによるスーパー・トルーパーのコンセプト・ペインティング
ボバ・フェットついてはおもしろい事実がある。このキャラクターはもともとは帝国に所属する「スーパー・コマンドー」という設定でデザインされ、そのアーマーも最初は白色だったのだ。ただし「マンダロリアン」という用語の由来については多少判然としないところがある。この言葉は1980年に出版された「The Empire Strikes Back Sketchbook(『帝国の逆襲』スケッチブック)」という書籍に初めて登場するが、ボバ・フェットのデザイナーであるジョー・ジョンストンによれば、本作製作中に「マンダロリアン」という言葉が使用されたという記憶はないという。それでもなお、この用語は使われ続け、マーベルからエクスパンデッド・ユニバース(拡張世界。現在は「レジェンド」扱いで、「正史」ではない)における物語として出版されたコミックス「Star Wars #68」(1983)へと引き継がれた。このコミックスでは、カーボナイト凍結されたハンがボバ・フェットによって連れ去られた後、レイアが惑星マンダロアを訪れるという展開が描かれる。彼女はそこで、「クローン大戦中、帝国に協力したマンダロリアン・コマンドー部隊が存在し、その中で生き残ったのは(ボバを含め)わずか数名であった」事実を知るのだ。
それから幾年もの後、ルーカスフィルムは『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』『スター・ウォーズ 反乱者たち』『マンダロリアン』といった「正史」上の諸作において、マンダロリアン文化を発展させ、アーマーの重要性を説いてゆく。
マンダロリアン・アーマーは見た目がクールなだけでない。そこには装着者にとって実用的かつ文化的な重要性が潜んでいる。マンダロリアン・アーマーは通常、ブラスター光弾をはじき、ライトセーバーにさえ耐えることができるベスカー合金で作られている。ベスカーは長きにわたってアーマーの素材として使われていたが、「大粛清」後にはそれが途絶してしまう。帝国がベスカーを残らず収奪してしまったからだ。『マンダロリアン』では、ディン・ジャリンが獲物を捕らえた際の報酬として帝国印の入ったベスカーを受け取り、それを詰め込んだカムトノをマンダロリアンの秘密の隠れ家へと運ぶ場面がある。そこでは、彼が属するグループの長であるアーマラーがベスカーを使ってジャリンのアーマーと実体弾発射装置「ホイッスリング・バード」を作り上げる様子が描かれるが、その際、残ったベスカーは新世代のマンダロリアンである「ファウンドリング」(孤児)に寄付されることが語られている。ジャリンは後に、グローグーへの贈り物としてベスカー製のチェーンメイル(鎖かたびら)のシャツを作るよう、アーマラーに頼んでいる。
その作り方や装飾に様々なバリエーションがあるマンダロリアン・アーマーだが、一般的には、対象となるマンダロリアンが所属する氏族と深い相関関係が存在する(マンダロリアン文化では「ファミリー」は通常「氏族」と呼ばれている)。レン氏族のアーマーは白地に黄色の輪郭をとった配色だが、エルダー氏族のものはグレーとオレンジ色から成る。また、デス・ウォッチと呼ばれるマンダロリアンの一派は青をアクセントにしたアーマーで知られていた(ただしこれはモールのシャドウ・コレクティブがマンダロアの政府に介入する以前のことである)。デス・ウォッチはマンダロアにおける内戦の影響で崩壊し、グループの半数がモールへの忠誠を誓うことになる。モールの部下となった戦士は「マンダロリアン・スーパーコマンドー」と呼ばれるが、彼らのアーマーの色彩は新たなリーダーの容姿を反映するがごとく、青が深紅の赤に変更されている。しかも、一部のヘルメットには角が付いているほどだ。
以上のように、アーマーにはさまざまな違いが存在する──が、いくつかのシンプルなディテールに着目することで、これがマンダロリアン・アーマーであると簡単に識別できるようになっている。胸板の小さな六角形のデザインやTバイザー付きヘルメット等がそれだ。
色のバリエーションに加え、氏族は「紋章」を有することでも知られている。紋章とはアーマーに刻印されているシンボルマークのことだ。ボバ・フェットは肩甲にミソソーの刻印があるが、彼はマンダロリアンとはみなされていないため、これが彼にとって何を意味するかは謎だ。ディン・ジャリンがグローグーとの絆を築き、「この二人のみから成る氏族」の確立が認められた際には、マッドホーンを氏族の紋章として受け取っている。マッドホーンとは二人が惑星アーヴァラ7で倒したクリーチャーだ。また、レディ・ボ=カターン・クライズのヘルメットにはフクロウの顔があしらわれているなど、他にも種々のタイプが存在する。
このように、マンダロリアン・アーマーには文化的に重要な意味が込められているため、マンダロリアンは誇りを持ってアーマーを身に着けている。サビーヌ・レンはかつて氏族から追放されていたことがあったが、そのような時も(独自にペイントした派手な装飾の)マンダロリアン・アーマーを使い続けており、自身の人生において歩むべき道を模索し、確立していった。また、ボバ・フェットが強力な胃酸を放つサルラックの胃袋から必死で脱出し、アーマーを捜索していた理由もこれで容易に説明がつくはずだ。
マンダロリアン・アーマーについて何か新しいことを学べただろうか?
Starwars.com 2022/2/14 の記事
筆者略歴
エミリー・シュコウカニはルーカスフィルムのジュニア・クリエイティブ・エグゼクティブ。彼女の仕事はスター・ウォーズ銀河の伝承や整合性をきちんと維持するためのサポート。エグゼクティブも時々はStarWars.comに寄稿してくれるんです!