——金田さんご自身とスター・ウォーズとの出会いはいつのことでしょう?
金田明夫(以下金田):
78年の土曜日ですね。僕は22歳で、妻とのデートでした。スター・ウォーズを観たくて、お金がない貧乏俳優にもかかわらず高い指定席を買って(※)。新宿ピカデリーだったかなあ。それからスター・ウォーズはリアルタイムでずっと観てきましたよ。
※
当時の映画館は基本的に自由席で、人気作を良い席で見るためには割高な指定席を購入するのが一般的だった。
——当時ご覧になったときは、やはり衝撃でしたか?
金田:
ピカピカのきれいな宇宙船しか出てこないSFドラマを観て育ったから、スター・ウォーズのぽんこつとか生活感のある宇宙船は衝撃でしたね。あの作りこみの細かさはすばらしいですよね。よく作ったなと。
また、エピソード4から始まるというのがずるいよね(笑)。そこから来るかって。エピソードが9つあるという設定を聞いて本当か?って思ったけれど、それはそれで続きがすごく楽しみになりましたね。
金田明夫(かねだあきお) 1954年東京都出身。俳優としてテレビドラマや映画、舞台などで幅広く活躍。また、スター・ウォーズシリーズのクローン・トルーパーやジャンゴ・フェットの日本語吹替も担当。同じ顔をした何十人ものクローン・トルーパーを個性的に演じわけ、単なる兵士だったクローン・トルーパーを人気キャラクターに押し上げた。
——お仕事でスター・ウォーズに関わったのはいつからでしょう?
金田:
「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」で、ジャンゴ・フェットの吹替をやらせていただいたときが最初です。
マネージャーから「やりませんか?」って言われて、おもしろそうだな、やりましょう!と。
——ジャンゴ・フェットといえば、人気キャラクターのボバ・フェットの“父親”という設定ですね。
金田:
そうそう。僕はマスクを被ったキャラクターが好きなので、エピソード5でボバ・フェットを知って、気になっていたんですよね。そうしたら、ジャンゴ・フェットが父親だっていうのがエピソード2を観てわかったものだから。そういう伏線の回収の仕方がスター・ウォーズはおもしろいなあと思いましたね。
「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」でジャンゴ・フェット(左)の吹替を担当して以来、約15年にわたってクローン・トルーパーの日本語吹替を演じ続けている。
——そして、引き続き「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」のクローン・トルーパーの吹替を担当されたんですね。
金田:
ジャンゴ・フェットのクローンだから同じ声なので、自動延長みたいな感じですね(笑)
——そして、アニメの「スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ」でもクローン・トルーパーを演じていらっしゃいます。全員同じ顔のクローン・トルーパーを演じるのは、むずかしくありませんでしたか?
金田:
クローン・トルーパーは、遺伝子がみんな同じだからとりあえず同じ人間なんだけど、仲間とか上官によって性格も変わるんです。
たとえばレックスの上官はアナキン・スカイウォーカーで、コーディはオビ=ワン・ケノービ。上官のキャラクターによってクローンのキャラクターも違ってくるんですよね。
——そういう背景も想像しながら演じられたんですか?
金田:
そうですね。そもそも答えがはっきりあるわけじゃないので、制作側も、作りながら構築してくような部分もありましたし、楽しみでしたね。
——人数でいうと、何人ぐらい演じられたのでしょう?
金田:
60人ぐらいまでは覚えてたんだけど、途中でもうわかんなくなっちゃって(笑)。みんな、名前も付いていますし、セリフがなくても名前があったりするから。実際は60人以上やったと思います。
——それぞれ、演じ分けているんですか?
金田:
ひとりひとりというより、1話ごとという感じですけどね。キャラクターづけは大切だなと思ったので、できるだけ演じ分けるようにしていました。
——毎回シナリオを読んで、「今回はこんなやりとりがあるからこんなキャラクターでいこう」という感じですか?
金田:
そうそう。それがまた楽しみでね。
おもしろいなと思ったのは、世界中でクローン・トルーパーの吹替をやってる人がいるわけでしょ。イタリア語を話すクローン・トルーパーなんか、ちょっと想像つかないよね(笑)。
——やはり日本語がしっくりきますか?
金田:
クローン・トルーパーのキャラクターって、日本人の気質に合っている気がするんですよね。自分を犠牲にしても、社会のため、会社のために生きていくっていうところとかね。
だから僕は世界一のクローン・トルーパーを目指したいな(笑)。
——好きなキャラクターは?
金田:
もう、みんなかわいいんですけどね(笑)。もちろんレックス、コーディ。それから、最後のほうまでずっと出てくるファイヴスもおもしろいね。シーズン1の第5話「ルーキーたち」に登場してから、成長してどんどん偉くなってくるんですよ。そのうちレックスに格好が似てきたりして、きっとレックスのことをリスペクトしてるんだな、なんて思ったり。シーズン6の第4話で殺されちゃうんだけどね…。
金田さんがとくに印象に残っているという、ファイヴスことCT-5555。「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」の伏線にもなっている重要なエピソードに登場する。
——そうやって演じ分けていると、思い入れも強くなるんでしょうね。
金田:
だから、正直終わる頃はちょっと寂しかったね。
あと、クローンは遺伝子のせいで人の倍の速さで老けちゃうんです。それも切なくてね。
老けているといえば、シーズン3の第1~2話に99号という、すごいじいさんが出ていてね。あのじいさんが泣かせてくれるんだ。最後は仲間のために自分が犠牲になって戦死しちゃうんだけど…。
——ひとりのキャラクターで、若者から老人まで全部やるという経験は他のお仕事でもなかなかないのでは?
金田:
そうですね。僕は声のお仕事の経験はあまりなかったのに、やらせていただくことができてうれしかったですね。
俳優によっては引き受けない方もいると思いますが、僕はなんでもやるのが楽しかった。
だけど、はじめのうちはなかなかうまくできなくてねぇ(笑)。
でも、リップを合わせる(映像の口の動きに声を合わせること)よりは、感情を吹き出すことに、ものすごくエネルギーを使いました。ひとりひとりの個性をどうやって出すか。裏切り者も気の弱いやつもいるしね。むしろ、いろいろなキャラクターを演じるよりは、ひとつのキャラクターをやるからこそ、いろんなことができたんだと思います。
——今回、エピソード2をテーマにした特別映像にご出演いただいてみて、いかがだったでしょうか?
金田:
5分じゃ語りつくせないよね、クローン・トルーパーは(笑)。
演じた人間でないとわからないことなどもお話ししていますので、ぜひぜひ楽しんでいただけるとありがたいです。
フォースと共にあらんことを!
金田明夫さんがゲスト出演する「クローン・トルーパー」の特別映像はこちら