4部構成の新作アニメーション・シリーズを創造する機会を得た『LEGO スター・ウォーズ/リビルド・ザ・ギャラクシー』(2024)のクリエーター・チームは、自分たちが夢の仕事を手に入れたことに気づいた。そしてジェダイ・ボブ役のボビー・モイニハン(長年のスター・ウォーズ&レゴ・ファン!)が、自身のミニフィギュアを毎日ポケットに入れてスタジオに持ち込む様子を見るに至り、それは確信に変わった。しかし、おそらく監督のクリス・バックリー、それにショーランナー/脚本家/エグゼクティブ・プロデューサーを務めるダン・ヘルナンデス及びベンジー・サミットにとっての最大の驚きは、「サーファーの兄ちゃん」然とした、まったく新しいバージョンのルーク・スカイウォーカー役にマーク・ハミルをキャスティングできたことだった。「私たちの人生すべてはこのためにあったと言ってもいいくらい」だとサミットは語る。
レゴとスター・ウォーズとコメディー脚本が得意技のヘルナンデスとサミットは「LEGO スター・ウォーズ」シリーズの脚本を書くにはこれ以上なくうってつけの人材といえた。大学で出会い、スター・ウォーズに対する愛で絆を深めた二人は、はるか彼方の銀河を舞台にした最初のプロジェクトに着手する以前は『Mutant Ninja Turtles: Mutant Mayhem』や『名探偵ピカチュウ』で共に仕事をした実績を持つ。
「『LEGO スター・ウォーズ』には少し風変わりなところがあるよね」とヘルナンデスは指摘する。「通常のスター・ウォーズ銀河とはちょっと違う。それが私たちのやってることにすごく合ってた。マニアックな設定を出してみたり、これまでずっと仲間内で勝手にやって遊んでたようなキャラクターのマッシュアップをやってみたりね」
ヘルナンデスとサミット自身、いろいろな種類のレゴ・ブロックを混ぜこぜにして遊んだ経験を持つが、その熱意と趣向が彼らを『リビルド・ザ・ギャラクシー』の構想へと導くことになった──ジェダイ寺院のコーナーストーンが取り除かれたことで、銀河が劇的に再構築され、いろんなものがアベコベになるという設定だ──が、こうすることで、彼らクリエイター陣には多くの柔軟性が付与される結果となった。再構築された宇宙(惑星クレイトの「しょっぱい」大地が、くしゃみがとまらない「コショウ」に変わってしまったところを想像してみてほしい)を扱うにあたっては、ストーリーを作る際、時代をひとつに絞ったり、キャラクターの数を限定する必要がなかったのだ。例えば、新3部作のジャー・ジャー・ビンクス、続3部作のレイ、『スター・ウォーズ:ヤング・ジェダイ・アドベンチャー』(2023-2024)のナブスといったキャラクターの面々が、様変わりしたミレニアム・ファルコンで一堂に会している様子をここでは見ることができる……嗚呼、だが一点、言っておかなければならないことがある。彼らは今回、悪者なのだ。
『リビルド・ザ・ギャラクシー』には、スター・ウォーズの世界とレゴ・ファン・コミュニティの両方から引用したイースターエッグが多く仕込まれている。シグ・グリーブリングの「シグ」は「シグネチャー・フィギュア」の略で、これは「ミニフィグ(ミニフィギュア)」の中でもレゴ作成者自身のミニ版を意味する人形から来た言葉だ。グリーブリングは見た目を良くするために表面に小さなレゴパーツを追加してディテールアップすることを表す用語だが、さらに詳しく言えば「greeblies(グリーブリーズ)」とは、モデル作成時にディテールアップ用として使われる「既存のモデル・キットから流用した小さなパーツ」を意味する言葉。これは元をたどると、1970年代、『スター・ウォーズ』で使う新しいモデルを作成する際、ILMによって作られた造語なのである。
シグとデーヴの職業とされる「ナーフ飼い」だが、スター・ウォーズ・ファンの多くは聞き覚えがあるのではないだろうか。そう、レイア・オーガナがハン・ソロを罵倒するときに口にする、例の「みすぼらしいナーフ飼い(scruffy looking nerf-herder)」だ。そのセリフがずっと心に引っかかっていたサミットとヘルナンデスは「ナーフ飼いの生活とはどういったものなのだろうか」というアイデアに必死で取り組み、シグの故郷の惑星をフェネッサと名付けた。これは、現在は「レジェンズ」枠に分類される、スター・ウォーズのロールプレイング・ゲームに登場する、ナーフが住んでいるとされる惑星から取られた名前だ。
ジェダイ・ボブの伝説
おそらく、ジェダイ・ボブほどレゴとスター・ウォーズのマリアージュをうまく体現しているものはないだろう。声を担当したのは俳優ボビー・モイニハン。ジェダイ・ボブはスター・ウォーズ世界では厳密には新登場のキャラクターだが、レゴ・コレクターには有名なミニフィグに基づいたものなのである。そのミニフィグとは、2002年にリリースされた『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002)の「レゴ 共和国ガンシップ」セットに登場した無名のジェダイ騎士だ。このジェダイはジオノーシスの戦いに参戦したジェダイの誰とも一致しないようで、謎に包まれた存在だった。そしてファンはいつの頃からか、このミニフィグを「ジェダイ・ボブ」と呼び始め、伝説が生まれた、というわけである。この事は「レゴ スター・ウォーズ ビジュアルディクショナリー」という本にも言及されている。
「こりゃみんな、興奮するぞって思ってた」とサミットは──予告編でジェダイ・ボブを見たファンの反応を思い出しつつ──語る。「心からそう思ってたよ。私の中のレゴ・オタク魂の正しさを大いに証明してくれる結果になったね」
このミニフィグについて単に知っていただけ、ではなく、すでにいくつかを所有していたのがボビー・モイニハンだ。彼はこのプロジェクトに参加できたことに興奮し、音声収録のセッション中はいつもポケットにジェダイ・ボブのミニフィグを入れて持ち歩いていたほどなのである。
「脚本を読んで、『もし自分が出演していなくても、毎日この番組を見るだろうな』と思ったよ」とモイニハン。「最高の作品さ!」
スター・ウォーズ・ファンの気持ちをしっかりと受け止めること、そしてありとあらゆる時代に存在するキャラクターたちを受け入れるということは、拡張世界における「レジェンズ」の物語や、長年にわたって醸成されてきた誠にヘンテコで滑稽なミームやファン理論を認めることでもあった。
「スター・ウォーズのどのバージョンで起こったことであろうと、あなたにとって意味のあることはすべて、この『LEGO スター・ウォーズ/リビルド・ザ・ギャラクシー』の中に存在してるんだって感じてもらいたかった」とヘルナンデスは言う。「そういうのは、自分にとっても本当に力強い後押しになったからね。というのも、自分が拡張世界の本を読んだ時も『マジでスゲー。これでスター・ウォーズの旅はまだまだ続けられるな』と思ったことを覚えているから」
「もし、それをやったらどうなるんだろう?」という姿勢が、『リビルド・ザ・ギャラクシー』を推し進め、ジャー・ジャー・ビンクスの別バージョンであるダース・ジャー・ジャーを生み出すことになった。
「これって、私たちが初日に提案したことのうちのひとつだったんだ」とサミットは言う。「で、すごく驚き、そしてうれしかったのは、ルーカスフィルムの全員がそのアイデアに賛同してくれたこと。ダース・ジャー・ジャーになったらどんな物語になるのか、改心したジェダイ・ベイダーだったらどうなるのか、を語る絶好の機会だった」
「あのマークなんだ」
『リビルド・ザ・ギャラクシー』に携わった多くのキャストやスタッフにとってのハイライトは、ルーク・スカイウォーカー本人ことマーク・ハミルとの仕事だった。
「つねにプロフェッショナルでありたい」とヘルナンデスは言う。「ところだよね、でも…」「あのマークなんだ」と監督のバックリーが言葉を添える。当初、スタッフの中にはハミルに喜んでもらえるか不安を感じていた者もいたが、脚本を気に入り、これまでとまるで違う「サーファー」ルークをスクリーンに登場させることにエキサイトしていたハミルを見て、彼らは心配が杞憂だったことを悟った。ハミルはルークに関する独自のジョークまでも考案し、その多くが最終版の映像に採用された。
「スター・ウォーズをバカにしているのではないよ」とヘルナンデス。「スター・ウォーズ銀河に対する愛を『LEGO スター・ウォーズ』の文脈に持ち込んで、楽しんでるってことなんだ」
本作ではハミルがこれまでに見せたことのないようなルーク・スカイウォーカーを演じたことに加え、ジャー・ジャー・ビンクスの俳優アーメド・ベストもダース・ジャー・ジャーとして復帰した。ローズ・ティコの俳優ケリー・マリー・トランがダース・ティコの声を担当し、ディー・ブラッドリー・ベイカーがダース・ナブスとして参加。そしてアンソニー・ダニエルズはダークサイドに目覚めた賞金稼ぎバージョンのC-3POを演じることになった。
バックリーは俳優たちに自由にアイデアを募り、即興のセリフも採用した。
「いいものが目の前に現れたら、ノーとは言えない。自分の考えを後生大事に抱えすぎるのはよくない」と彼は言う。「それがこのグループの素晴らしいところだと思う。私たちは誰も変なこだわりは持ってないよ。最高にエキサイティングで楽しいスター・ウォーズのイベントを作りたいだけなんだ」
作り上げた素晴らしいスター・ウォーズの物語がそれ自体で成立するという点は極めて重要なことだった。
「私たちのとったアプローチはというと、確かにこれは『LEGO スター・ウォーズ』。だけど、スター・ウォーズの物語を語っているには違いないんだ。スター・ウォーズとして成り立たなければ、どんなに楽しいことをしていても、どんなジョークを盛り込んでいても、やる価値はない」とヘルナンデスは言う。
子供の頃にレゴ・ブロックでよく遊んだことはいい思い出だとするモイニハンだが、これまでにいやというほど「スター・ウォーズごっこ」をした末に得た今回のユニークなジェダイ役をありがたく享受し、「私は怠け者のジェダイで、それが私の夢の役柄なんだ」と冗談を飛ばす。
「ジェダイ・ボブは自分が最高のジェダイではないことをわかっている。ライトセーバーの使い方が下手だと言ってるしね。そこが好きなんだ。それほど達者ではないけれど、いろんな力を持つジェダイを演じるのはとても楽しい。笑っちゃうキャラさ」。自身のキャラクターのセリフはスター・ウォーズの象徴的なテーマである「運命の対決」の場面にも盛り込まれたが、それ以外でも録音セッション中、お気に入りのセリフをなんとか押し込もうと努力したという。
「『嫌な予感がする』『フォースと共にあらんことを』『ポッド・ベイのドアを開けろ』等々だね。スター・ウォーズの台詞を言い続けたよ」
『リビルド・ザ・ギャラクシー』の制作に関わった全員が、スター・ウォーズへのオマージュやレゴからの引用を完璧に表現しようと熱心に取り組んだ。
「違法な組み立てほどレゴ・オタクが嫌うものはないからね」とサミットは冗談を言う。制作の過程で、サミットは自宅のレゴ組み立て室でXウイングとタイ・ファイターを組み合わせる作業に取り組み、その後にデンマークのレゴ・デザイナーに協力を仰いだ。こうしてできたセットは現在絶賛発売中だ。クリエイター陣はまた、「LEGO スター・ウォーズ」の世界がどのようなものになるか、どこまで行けるのかの限界に挑戦した。バックリーは『リビルド・ザ・ギャラクシー』において、さまざまな色やサイズのレゴ・スタッド(ポッチ)を使用し、新たなレゴ・バージョンのハイパースペースを作り上げている。
クリエイターたちは、また、レゴとスター・ウォーズのパートナーシップが始まって以来の過去25年間を含め、何十年にもわたって子供、そして大人が楽しんできたレゴでの遊び方を尊重したいと考えていた。多くのレゴ・ファンにとっては「セットを組み立てて棚に置いて終わり、というわけではない」とサミットは言う。
「子供にとって本当に楽しいのは、大きな箱に入ったレゴのスター・ウォーズ全部を床にぶちまけて、混ぜ合わせることなんだ。すると突然、ダース・モールが善玉になり、異なる時代がつながっていく。タイムラインは意味をなさない。楽しさだけがそこにはある。ということで、基本的に私たちがやったのはそういうことさ。レゴのスター・ウォーズの世界全体をばらばらにして混ぜ合わせるんだ」
「私たちはどんなものだって愛を持って受け入れるよ」とヘルナンデスは付け加える。「私たちは、それが楽しければスター・ウォーズを、そしてレゴを楽しむすべての方法を受け入れる。私たちはそれを理解していて、あなたたちと共にあるってこと」
「『LEGO スター・ウォーズ/リビルド・ザ・ギャラクシー』キャスト&クリエイター・インタビュー」パート2に続く。
Starwars.com 2024/9/12 の記事
筆者略歴
生涯にわたるスター・ウォーズ・オタクであるエイミー・リシャウは『スター・ウォーズ タイムライン』『Star Wars: The High Republic Character Encyclopedia』『Star Wars I Love You. I Know.』等、数々の書籍の著者。エイミーの活動について知りたい向きは「X」(旧Twitter)かInstagramの@amyrichauまで!