ハイ・リパブリック時代、ジェダイは邪悪な略奪者集団「ナイヒル」から銀河を守る任務についていた。そのジェダイたちの中にいたのが、ミリアランのヴァーネストラ・ロウだ。十代にしてジェダイ・ナイト(騎士)となった天才少女である。彼女は決して並外れて強大なパワーを持っていたわけではない。だが、彼女が持つ堅い意思とフォースに対する絶対的献身は、ヴァーネストラをして他のパダワンとは一線を画す存在たらしめていた。『スター・ウォーズ:アコライト』の物語の時点では、彼女は尊敬を集める長老格のジェダイ・マスターとしてオーダーに仕えている。
6月5日にディズニープラスにおいて2話連続のプレミア配信でスタートした『スター・ウォーズ:アコライト』。本作で実写デビューを飾るヴァーネストラ・ロウだが、その前に、これまで彼女がたどってきた旅路を復習しておこう。
舞台裏
ヴァーネストラ・ロウのはるか彼方の銀河における初舞台は、2021年に刊行されたジャスティナ・アイルランド著のジュニア小説「Star Wars: The High Republic: A Test of Courage(勇気の試練)」(未邦訳)である。読者はここで16歳の彼女に出会う。ヴァーネストラがジェダイ・トライアルを完了し、史上最年少のナイト(騎士)のひとりとなってわずか1年後のことだ(なお、オビ=ワン・ケノービがジェダイ・ナイトに昇格したのは25歳の時)。
ヴァーネストラのトレードマークといえば紫の光刃のライトウィップ(光刃が鞭状にしなるライトセーバー)だが、アイルランドによれば、こんな少女があれほどの危険な武器を扱えるスキルの持ち主なのだ、と示したかったのだという。「皆いつも『ヴァーンは天才だ!』って言う」とアイルランド。「けど、何が彼女を特別なものにしているんでしょう? 彼女は何が違う? おそらく私たちにはまだ見えていないのだろうけど、(彼女のマスターの)ステラン・ジオスがヴァーネストラをあれほど早く昇格させたのは、彼女に何かを見いだしたから?」
天才
他の多くのジェダイと同様、ヴァーネストラ・ロウも幼少期にフォース感応者であることがわかると、ジェダイ聖堂における修行生活に入ったひとりだ。彼女はフォースを、可能性の海に流れ込む、いわば巨大な水か川のような存在ととらえていた。ヴァーネストラはステラン・ジオスのパダワンとなる。フォースに対する信仰を育んできたジオスは有能な教師であり、慈しみ深い指導者であった。このマスターと弟子は、氷の惑星ヒネスティアのジェダイ寺院に配属される。マスターの推薦により、彼女は15歳で初めてのジェダイ・トライアルを受け、合格──これはほとんどのヤングリングがパダワンであることに慣れ始めたばかりの年齢であった。パダワンの中には彼女の昇格に嫉妬を覚える者もいないわけではなかったが、ヴァーネストラが新たに得た称号を仲間に自慢したりひけらかしたりすることはなかった。彼女は当然のことながら、ジェダイ・ナイト(騎士)として慎み深く振る舞い、自身の能力を他者を助けるために使うことに専念した。また、仲間のパダワンの多くが「愛情」や「愛着」をどう扱ってよいか困惑していたのに対し、ヴァーネストラがそのようなものに惹かれることはなかった。
ヴァーネストラのジェダイ・ナイトとしての最初の任務は、ポート・ヘイリープの前哨基地へと赴き、共和国元老院議員の娘であり──そして若くて聡明な──エイヴォン・スターロスを監督、保護することだった。ヴァーネストラはこの任務で、ジェダイ・マスター、ダグラス・サンヴェイルと、他者の感情に過敏な彼のパダワン、イムリ・カンタロスに出会う。マスター・サンヴェイルはこの若きジェダイ・ナイトに「ヴァーン」なるあだ名を与えたが、彼女がそんな呼称を許したのは彼だけである。彼女はそれをひどいニックネームだと考えていたからだ(だがやがて、彼女は親しい友人たちには「ヴァーン」と呼ぶことを許すようになる)。
マスター・サンヴェイルがナイヒルの海賊による攻撃で命を落とすと、ヴァーネストラはイムリに渦巻く怒りや悲しみを落ち着かせ、彼を自身のパダワンにとった。しかし、内在する強力な能力に苦しんでいたのはイムリだけではなかった。ヴァーネストラもハイパースペース航行中に見るビジョンに悩まされていたのだ。そしてそれは、ナイヒルに何十年間も捕らえられていた女性、マリ・サン・テッカへと彼女を導くことになる。
崩壊
ヴァーネストラ、イムリ、エイヴォンが協力して、死に瀕していた惑星ダルナの人々を避難させてすぐ後、ヴァーネストラとパダワンはそれぞれ別任務での行動を余儀なくされる。イムリはスターライト・ビーコンへと配置されるが、この宇宙ステーションは破壊され、惑星エイラムの海に墜落してしまう。この惨事でマスター・ステランが亡くなるが、ヴァーネストラはエイヴォンとイムリの命も、このナイヒルの攻撃により失われたのではないかと考えた。
すでに疲れ果て、悲しみに打ちひしがれていたヴァーネストラだったが、惑星ジェネティアでの壊滅的な戦いが彼女に追い打ちをかけると、彼女の──フォースに対してではなく──ジェダイ・オーダーに対しての──信念がゆらぎ始めた。このことにより、彼女は「ウェイシーカー」となることを選択する。ウェイシーカーとは、評議会の命令ではなく、フォースの意志による導きに従うジェダイのことだ。
前進
フォースは最終的にヴァーネストラを惑星イベへと導いた。この頑固なジェダイは、自然と調和して暮らす穏やかな種族と共に暮らすことにより、ようやく安寧(あんねい)の地を見つけると──ナイヒルが現れて以来起こったすべての事柄を受け入れ──立ち直りを見せ始める。そして徐々に回復してくると、定期的にライトウィップの訓練を再開する。彼女は、もっと強くなろう、と決意したのだ。
エイヴォンがヴァーネストラの足取りを追って辺境のイベへと赴き、援助を求めた際、ヴァーネストラは彼女と衝撃の再会を果たし、その際、イムリもまたスターライト・ビーコンの墜落を生き延びていたことを知る。ヴァーネストラは最終的に惑星アリチョでイムリとも再会を果たす。
それからほどなく、ヴァーネストラはジェダイ評議会と対面し、ナイヒルについての発見、ハイパースペースのビジョン、そして離れている間に自身が学んだことなど、評議会からの多くの質問に答えた。彼女はジェダイ・ナイトとして、いつでも戦いに戻る心構えであった。
さて、ヴァーネストラの今は? その答えは『アコライト』での彼女──とライトウィップ!──の活躍で確認していただくとしよう。ジェダイ・マスター、ヴァーネストラ・ロウ役のレベッカ・ヘンダーソンが出演するこのシリーズは、6月5日より配信開始。本作を視聴できるのはディズニープラスだけだ。なお、ヴァーネストラはテッサ・グラットン著の新刊「Temptation of the Force」(未邦訳)で小説世界にも再び登場しているのでぜひご一読されたい。
Starwars.com 2024/5/29 の記事
筆者略歴
ケリー・ノックスは「Star Wars Conversation Cards」「Star Wars Be More Obi-Wan」「Star Wars: Dad Jokes」の著者であり「Star Wars Everyday」「Return of the Jedi: A Visual Archive」の共同著者。ダジャレはいつだってマジというスタンス。X(旧Twitter)の@kelly_knoxで彼女をフォロー!