コミック『AMAZING SPIDER-MAN (2022) #26』で、カマラ・カーンはスパイダーマンを助けるため、究極の犠牲を払い、世界を救います。しかし彼女は、クラコア島のミュータントたちによって復活させられ、彼女自身もまたミュータントであることを知らされました。カマラ・カーンがそれが何を意味するのか理解する前に、反ミュータントの組織オーキスが猛攻撃を仕掛けます。そして、マーベル・ユニバースのミュータントのほとんどが一掃され、X-MENは地下に追いやられてしまいました。
コミックの新シリーズ『MS. MARVEL: THE NEW MUTANT』で、カマラはこの世界でミュータントとして存在するために戦わなければなりません。X-MENとの初めてのミッションとして、彼女はオーキスが次の計画を企てているエンパイア・ステート大学に潜入します。
MS. MARVEL: THE NEW MUTANT writer Iman Vellani
本記事では『MS. MARVEL: THE NEW MUTANT』のライターを務め、マーベル・スタジオの『ミズ・マーベル』でもカマラ役を演じているイマン・ヴェラーニが、今回初めてコミックを執筆することについて語ります。彼女は数年前にこのシリーズの構想を練っていたことを明かし、カマラの夢を通してキャラクターのアイデンティティを探求したと言います。また、ミズ・マーベルの新たなヴィランの存在をほのめかし、シリーズでのコラボレーターの功績を称えました。
──ミズ・マーベルのことはよくご存知だと思いますが、このコミックの制作を通じて、このキャラクターについて新たに発見したことは何ですか?
何も学ばなかったとは言いたくありません。というより、コミックの執筆という経験が私にとってとても新鮮だったので、とにかくその衝撃を受けたという感じです。このコミックのために書いたシーンの多くは、ずっと前に日記に書いていたものばかりで、自分自身の経験を参考にしています。この3年間で私の人生は大きく変わり、それはコミックの中のミズ・マーベルの人生も同じでしたから。このプロセス全体を通して学んだことの多くを彼女の本に取り入れたいと思いました。
人生における大きな変化にどう対処するべきなのか、自分の周りにどんな人たちが必要なのか、そして自分が家族や友人を本当に頼りにしていたことなど、自分自身についてたくさん学びました。だから、ブルーノはこの物語の重要なキャラクターです。
コミック制作を進めるにあたり、実はかなり緊張しました。私は制作に関わる人たちの才能にとても敬意を感じています。G・ウィロー・ウィルソンとサナ(・アマナット)が創り上げたキャラクターに忠実な形で、良いものを作り、ミズ・マーベルを表現しなければならないというプレッシャーを感じました。そして今回、サビール・ピルザダというマーベル・スタジオ『ミズ・マーベル』にも携わっていた素晴らしい共同脚本家がいました。
このストーリーは、ミズ・マーベルが何を象徴しているのか、他のヒーローと何が違うのか、なぜ彼女がこれほど時代を超越したキャラクターなのかを実にうまく表現していると思います。私はこの機会に、このキャラクターと彼女のコミック、そしてスーパーヒーローとしての彼女の力に対する私の愛情をすべて表現したいと考えていました。それが私たちの本の中で何らかの形で伝わるといいなと思います。私にとってはとても大きな、素晴らしい学びのプロセスでした。

MS. MARVEL: THE NEW MUTANT (2023) #1 cover by Sara Pichelli
──このシリーズを初めて手に取る前に、読者が知っておくべきことは何でしょうか?
ご存じの通り、彼女は『AMAZING SPIDER-MAN (2022) #26』で死んでしまいました。しかし、コミックにおける死はすべて非常に短いものであり、まだまだ語るべきミズ・マーベルの物語が残っています!ジェリー・デューガンの「HELLFIRE GALA」で、カマラがミュータントであることをセレブロが探知したため、彼女はクラコア人の蘇生技術によって復活することができました。
もちろん、このことはカマラの心にたくさんの考え、感情、懸念を抱かせることになります。「すべてのミュータントが文字通り目の前で死んでいく中で、どうやってこの新しいことに対処すればいいんだ!」と彼女は感じています。「HELLFIRE GALA」でX-MENであることが何を意味するのか、真正面から突きつけられた彼女には、自分の思いを整理する余裕がありません。そんな私たちのシリーズは彼女の死から10週間経ったところから始まり、この時点で、彼女の葬儀に参列した友人や家族の記憶は、エマ・フロストによって消去されています。
本シリーズの冒頭で、カマラは一人ぼっちです。彼女は自分の問題をX-MENに持ち込むことを望んでいません。だって、繰り返し悪夢を見る16歳の子供なんて、誰が相手にしたいと思うでしょうか?だから彼女は、復活したことによる心理的な影響や、与えられた新しい人生について一人で悩んでしまいます。それは大変なことで、カマラはただ誰かに話す必要があるのです。

MS. MARVEL: THE NEW MUTANT #1 interior artwork by Carlos Gómez
──カマラのミュータントとしての側面を探る上で、最もエキサイティングだったことは何ですか?
情報が解禁されたとき、SNSの反響はすごくて、これほど多くの人が気にかけてくれているということにとても興奮しました。カマラの変化は重要な意味を持つ、大きなキャラクターになりました。なんと素晴らしいことでしょう。当然SNSで反応しているファンたちはまだその時点でストーリーを読んでいなかったので、なんでもすぐに批判するような人たちではありませんでした。
とにかく興奮しました。だってミュータントですよ?正直私はあまりX-MENのコミックを読んだことはなかったのですが、X-MENのすべてを学び、自分の好きなキャラクターを見つけようとしていました。グラント・モリソンと(ジョナサン・)ヒックマンの作品は、制作において私の教科書でした。
カマラの異なる側面を探るのは、とても楽しいことでした。なぜなら、アベンジャーズの一人、インヒューマン、チャンピオン、パキスタン人、イスラム教徒など、彼女はすでに様々なレッテルを貼られてきたからです。彼女がミュータントであることは、そのレッテルのひとつに過ぎないと考え、ずっとX-MENの遺伝子を持っていたのだから何も変わらないし、どうでもいいことだと思っていました。しかし、この新しいスーツが彼女の予想以上に大きな意味を持つことに彼女は気付いていませんでした。
ミズ・マーベルに対する世界全体の見方が大きく変わり、彼女は初めて敵として見られることがどういうことか、味わうことになります。特に「HELLFIRE GALA」の後、世界はミュータントを憎むようになってしまいました。私たちはカマラをエンパイア・ステート大学に入学させ、さらにオーキスから資金援助を受けたプログラムを設けました。当然これらは彼女にとってチャレンジになるでしょう。

MS. MARVEL: THE NEW MUTANT #1 interior artwork by Carlos Gómez
──彼女の重要な歴史に貢献できたことをどのように感じていますか?
本当に、凄まじいです。実際のマーベル・コミックの正史に携わることができて、そして彼女のこれからの展開に貢献できるなんて、とてもクールです。私はてっきり、ミニシリーズかワンショットを与えられて、「どうぞ、お好きなように」と言われるものだと思っていました。でも実際は、「彼女はミュータントで、あなたにはその影響を描いてほしい」と言われたんです。私は「なんてプレッシャーなんだ!でも今更引き下がれない!」と感じていました。
でも、私はとても手厚いサポートをしてもらいましたし、コミックの制作過程に魅了されました。たくさんのポッドキャストも聞いて、その中でも『Women of Marvel』は非常に重要でした。そこで語られていたものを目の当たりにするだけで、まるで魔法にかけられたような気持ちになりました。
また、私が幼い頃に寝室で書いていた物語を今、沢山の人が読もうとしていることが、あまりにも非現実的です。とてもパーソナルなことですから。それと、10 人ほどのチームで作業をしているのですが、その人数は映画撮影の時の100分の1です。これはとてもエキサイティングなことであり、同時に恐ろしいことでもあります。なぜなら、読者とクリエイターとの距離がより親密になるからです。
ファンのみんなが、私のことをミズ・マーベルを演じる人間としてだけでなく、私がキャラクターのことや、コミックのことが大好きなファンとして知ることになるでしょう。私たちはサンドマンやシルバーサーファーなど、昔のX-MENのコミックからたくさん影響を受けてきました。本作にはたくさんのオマージュが詰まっています。そもそもこんなことをやらせてもらえるなんて、本当に光栄で、素晴らしいです。

MS. MARVEL: THE NEW MUTANT #1 interior artwork by Carlos Gómez
──サビール・ピルザダとの共同作業は、脚本の向上にどのように役立ちましたか?
サビールの名前はかなり早い段階から挙がっていました。編集部から共同脚本家が欲しいかどうか聞かれたので、私は「はい!必要です!一人では絶対にできません」と答えました。ストーリーのアイデアはたくさんあるけど、コミックを書いたことはこれまで一度もありませんでした。映画の脚本とコミックの脚本は全く異なるので、私のアイデアをひとつにまとめる手伝いをする人が必要でした。
サビールは数あるリストの最初の一人でしたが、彼は執筆だけでなく協力者としてもとても素晴らしく、とても寛大な人です。彼は物語を進める上で、私に優位な立場を与えてくれました。私はアイデアや実現したいことがたくさんあったのですが、彼は「よし、これが私たちが伝えたいストーリーにとって重要なことだ。これをベースに他の要素も取り入れよう」と言ってくれました。私は彼から多くのことを学びました。
じっくりと話をしたわけではないけれど、コミックを書くいろはを教えてくれました。とても素早く対応していただいたので、すぐに作業を始めることになりました。彼の意見の伝え方、メールの返信の仕方、メモの取り方などを参考にしていました。彼のような才能がありながら、人間的にも優れていて、マナーもとても良い人がいて、とても素晴らしかったです。
カマラにとって、私にとっても未知の領域だった彼女のミュータントとしての側面を理解する上で、「HELLFIRE GALA」の脚本を担当したジェリー・ドゥーガンにもとても助けられました。私はX-MENのコミックをあまり読まずに育ったので、いろいろ調べたり、ジェリーやサビールから学んだり、気に入ったコミックがあれば全部スクリーンショットを撮っていました。お気に入りのコマをフォルダごとにまとめて、それらをすべてオマージュしようと思いました。こんな素晴らしい、寛大なコラボレーターと一緒にこの仕事を経験することができて本当にラッキーでした。

MS. MARVEL: THE NEW MUTANT #1 interior artwork by Carlos Gómez
──アーティストのカルロス・ゴメスとアダム・ゴーハムとの仕事についても少し教えてください。2人の仕事で衝撃を受けたこと、驚いたことは何ですか?
2人の絵のスタイルは全く違うのですが、両者ともストーリー重視で、それが本当に必要な要素でした。カルロスは現実的な要素を多く担当し、アダムはカマラが直面する精神的な要素を担当しています。
カルロスは登場人物の感情を表現するのがとても上手で、まるですばらしい俳優のようです。それこそがアーティストの仕事であり、私の毎日の楽しみは、朝に彼らのスケッチを受け取り、必要であればコメントをつけることです。彼らがどう自分の書く言葉に反応しているのか、それを確認するのはとても魅力的なことで、私が思い描いた通りの絵が上がってくると、それだけで嬉しいものです。
その一方で、そうでない場合は、「私の表現の仕方に工夫が必要だな 」とか、「コマの説明にもう少し余裕を持たせて、2人に自分のやりたいこと、伝えたいストーリーにふさわしいと思うことを自由にやってもらう必要があるな」 という風に考えます。私はアーティストが理解できるように脚本を書く方法について多く学びました。なぜなら、脚本はまさにアーティストへの手紙だからです。
カルロスとアダムの描き方、仕事の仕方、トーンやスタイルを理解していくにつれて、自分の脚本を調整するようになりました。今は彼らのことをよく理解していますし、コミュニケーションもよく取れていると思います。4巻にわたる大変な旅でしたが、才能に溢れる彼らに救われました。

MS. MARVEL: THE NEW MUTANT #1 interior artwork by Carlos Gómez
──他のミュータントたちと同様、カマラは自身が存在する権利をかけてオーキスと戦わなければなりません。壊滅的な「HELLFIRE GALA」での攻撃を受けて、彼女らは今後どのような活躍を見せてくれるのでしょうか?
ミュータントが新たな攻撃を受けるたびに、オーキスも彼らの過去のミスから学んでいます。センチネルと同じように、彼らはミュータントについて急速に学び、進化しています。だから、地球に残されたミュータントたちは、常に危機感を抱いていると思います。
ミズ・マーベルは、この件に関してかなり無知な状態でこのミッションに参加することになります。彼女はエンパイア・ステート大学の敷地内でオーキスが何を企んでいるのか突き止めるというミッションに駆り出されるのですが、彼女は「ここは普通の学校で、ロボットが好きで優秀な生徒がたくさんいるだけ。何も起きていない」と感じます。すると彼らは、「違う、ミズ・マーベル、あなたは分かってない。この人たちは何かを企んでいて、それを解明するのがあなたの役目なの」と彼女に言います。そしてカマラは「私はもう普通の夏は過ごせない。オーキスが何を企んでいるのか突き止めなきゃ」と考えを改めることになります。
そして第1号で彼らがチタウリを使って実験していたことを知り、彼女は 「彼らはいったい何を企んでいるんだろう?」と疑問に思います。そしてシリーズを通して、彼らが行ってきた実験について少しずつ明らかになっていき、オメガ・センチネルがその主導者だということも判明します。サビールによるニチカという新キャラクターも登場し、彼女もまたオーキスでさえ知らない何かを企んでいます。
本作には、オーキスの中で強力な手腕を発揮するクールな女性キャラクターが数多く登場します。そんな中、ミズ・マーベルは「彼女たちが悪いのは知っている。ミュータントの大虐殺は彼女たちによるものだけれど、私にはこの事態に対処する資格がない。私はミュータントになったばかりで、それが何を意味するのかさえまだわかっていない」と悩みます。彼女は自分自身について、そしてミュータントが直面している差別の大きさについて、多くを学ばなければなりません。それが、彼女が直面する大きな試練です。

MS. MARVEL: THE NEW MUTANT #1 Homage Variant Cover by Lucas Werneck
──このシリーズで読者に一番注目してもらいたいことは何ですか?
カマラの夢の世界が舞台となるシーンがたくさんあって、そこで出会うとてもクールなキャラクターたちがいるのですが、彼らはカマラの精神の延長であり、彼女という人間を映し出した存在です。しかし、彼女は自身がヒーローとして何ができるのか、まったく気づいていません。
彼女の心の旅は、私が本当に望んでいたものだと思います。相談相手もいない16歳の子供に、夢と死からの復活が与える心理的影響を探求したいと編集部に提案しました。それが本当に楽しかったです。夢というのは、文字通りやりたいことが何でもできます。それをページの中で表現したアダム・ゴーハムの信じられない作品をみんなに見てもらえるのがとても楽しみです。

MS. MARVEL: THE NEW MUTANT #2 variant cover by Adrian Alphona
『ミズ・マーベル』はディズニープラスで独占配信中。