ディズニー/ピクサー映画でグッとくる飛ぶシーン。技術の進化とともにいろいろな描き方が可能となりました。でも胸に迫るのはその背景に物語があるから。そこに秘めたクリエイターの思いも含め、飛ぶシーンを年代に沿って観ていきましょう!
あり得ない動物を飛ばしてみたら?
大きな耳で空を飛ぶかわいい子象、ダンボの物語『ダンボ』(1941)。この作品に登場するキャラクターは、アニメーションらしいアニメーションになるようシンプルに、背景は水彩画で描かれました。短い期間で作品を仕上げるための方法でもあったようですが、『ダンボ』のお話にはぴったり。アニメーターは、象やサーカスに登場する動物たちをスタジオに借りてきて、リアルな動きやアクションを観察して描いたのだそうです。それでも"飛んでいる象"をスケッチすることはできません。ダンボの飛び方は作画監督ビル・ティトラが創造したものですが、ダンボがお母さんに甘える表情や困っている様子は、自身の息子をモデルにして描いたのだそうです。表情がとても豊かでかわいいのは、息子を描いているからなのかもしれません。
飛ぶ象というあり得ないキャラクターを見事に描いた『ダンボ』の飛行シーンにもう一回注目して、映画をご覧になってみてはいかがでしょう。
飛ぶ映画の代表選手
『ピーター・パン』(1953)の舞台は、ロンドンの静かな住宅街ブルームズベリーにあるダーリング家。ピーター・パンが夜な夜なダーリング家に遊びに来るのは、この家には長女のウェンディ、弟のジョン、マイケル、そしてお母さんのメアリーと、彼を信じる人が大勢いたから。
ウェンディが聞きます。飛ぶためにはどうしたらいいの、と。ピーター・パンの答えは、「すてきなことを考えるんだ」。それに妖精の粉があれば、子どもはみんな飛べるというのです。
『ふしぎの国のアリス』(1951)のアリスの声も担当したキャサリン・ボーモント曰く、声を演じた俳優たちは、台詞や歌のレコーディングとは別に、実際に動いて演技もしたそうです。そして、撮影されたその映像をもとに原画が描き起こされました。俳優たちが演技をした撮影スタジオには、演じるのに必要な部分だけが用意されていたそうです。
大変だったのは、重力を感じさせないように飛ぶ演技。「ハーネスを装着した私を、ステージエリアに吊り上げ、自由に飛んでいるように移動させてくれました」。作画監督のエリック・ラーソンのこだわりの飛行演技プランが垣間見えます。
セルとコンピュータを駆使した魔法のじゅうたん
砂漠の王国アグラバーに住む青年アラジンと、王女ジャスミンの恋の物語『アラジン』(1992)。湖面すれすれに飛びながら、または雲海の上を飛行しながら、魔法のじゅうたんで2人が世界一周旅行をする場面にはうっとりしてしまいますよね。2人を乗せて飛ぶあの魔法のじゅうたんは、ディズニー・アニメーション初の試みとなる従来のセル・アニメーションと、コンピュータ・アニメーションを組み合わせて描かれました。コンピュータで描いたのは、じゅうたんの模様やテクスチャなど。外形と四隅に着けられたタッセルはセル・アニメーションだそうです。
世界旅行を終えてテラスに降りるジャスミンの足元に、階段を作ってあげるじゅうたんの細やかな優しさまでじっくりご覧ください。
飛んだからこその絶景を一緒に!
妻と約束した冒険へ旅立つ78歳のカールじいさんの物語『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009)。立ち退きを迫られている家にたくさんの風船をつけて、近所の子どもラッセルをお供に、伝説の滝"パラダイス・フォール"へと旅立ちます。
風船をつけて家に持ち上げることは物理学的には不可能ではありません(飛行はまた別)。映画の技術監督が試算では、2300万個あれば空に浮かぶことができるそう。しかしそれだけの風船をつけた場合、家は点の小ささになってしまうので、ピート・ドクター監督は描かれる風船の大きさをカールじいさんの2倍に、飛び立つシーンでの数を2万622個に絞ったそうです。事実を踏まえた上で、アニメーションとしてどう描くか?腕の見せどころとはこういうことなのでしょう。家が風船によって飛び立つ場面は、理論を凌駕する感動のシーンとなりました。
カールじいさんが目指すパラダイス・フォールは、頂上がテーブルのように平らな台地にあります。『カールじいさんの空飛ぶ家』のクリエイティブチームは、参考のために、ベネゼイラのカナイマ国立公園にある頂上台地アウヤンテプイを訪ねたのだそう。パラダイス・フォールは、そこにある瀑布"エンジェルス・フォール"がモデルになっています。
風船で飛んできたからこその絶景。ぜひ映画でお楽しみください。
科学は人のためにあるから愛おしい
兄が発明したケア・ロボット、ベイマックスとともに、巨悪に挑む天才ロボット工学者、ヒロの成長を描く『ベイマックス』(2014)。
パワードスーツを着たベイマックス2.0に乗って、ヒロが行う飛行実験シーンは、とても美しくスリリング。ゴールデン・ゲート・ブリッジを思わせるサンフランソウキョウの大橋や日本語の看板も見える街中をテスト飛行する様子は、まるでジェットコースターに乗っているかのよう。サンフランソウキョウの空に浮かぶ装置に乗って2人が見る夕日は格別です。
本来、人の心と体を穏やかにするために作られたロボットであるベイマックスの魅力は、仄かに光を放ち、見ただけでホッとする白いふわふわの姿。その光を描くのに、初めて"ハイペリオン"という光レンダリングソフトが使用されました。光のエネルギーを運び、さらに多くの光線に変化させることができるハイペリオンによって、この世に溢れる数えきれないほどの光線を再現することに成功しました。飛ぶシーンも素敵ですが、科学は人の幸せのためにあるというタダシの思いを描いた、光に包まれたふわふわのベイマックスの姿も今一度味わってみてください。
*本記事の作品公開年はアメリカ公開の年を記載しています

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