ハワイのカウアイ島に暮らす5歳の女の子リロと、犬のような姿をしたエイリアンのスティッチが繰り広げるハートウォーミングな物語、『リロ アンド スティッチ』(2003)。製作陣の綿密なリサーチと、ディテールへのこだわりに満ちた本作品から、ハワイ愛が感じられる要素をいくつかピックアップ。映画を観ながら見つけてみてくださいね。
製作陣が恋したカウアイ島
リロと姉のナニ、その恋人デイヴィッドが暮らすこの作品の舞台は、"庭園の島"と呼ばれる美しきカウアイ島。製作陣が皆、リサーチ旅行で恋に落ちたという島ですが、なんと企画段階においては、米国カンザス州やケンタッキー州の田舎を舞台とすることを想定していたのだとか。海でなかったら、まったく違うムードの作品になっていたかもしれませんね。
大きな家族の概念=オハナ
この作品のキーワードである「オハナ」。ハワイ語で「家族」の意味ですが、その概念は、両親や親族、血のつながりや一定の構成にとらわれない、広義の"家族"を表しています。いろいろな家族のカタチがあっていい。スティッチのような、ちょっと変わったメンバーがいてもいい。友達だって、まだ会ったことのない誰かだって、みんな家族――。コミュニティの誰もがお互いを気遣いあう、あたたかい島のライフスタイルが反映されているのです。
ハワイのスラングと「カプ」のサイン
ナニの声はハワイ生まれのティア・カレル、デイヴィッドの声はハワイ育ちのジェイソン・スコット・リーが担当。2人は脚本において、ハワイらしい話し方やスラングを台詞に盛り込むサポートをしたそうです。ちなみに、姉のナニに反抗したリロが、部屋のドアに「カプ」というサインを貼りつけるシーンがあります。英語の「タブー」は、この「カプ」を語源とする言葉で、禁忌または禁止を意味しています。精いっぱいの反抗心で、立ち入り禁止を主張するリロの姿にキュンとしますね。
水彩で描かれたハナペペ
カウアイ島にある静かな小さい町、ハナペペから、大きなインスピレーションを受けた本作品。プロダクション・デザイナーのポール・フェリックスは「さびついた橋から、手作りの郵便受けまで、この町の家々のディテールを観察した」と語っています。本編内で描かれる景色を、水彩画のタッチにしたのも、ハナペペのゆるやかで美しい雰囲気を表現するための手段だったそうです。『ダンボ』(1954)以来初めての、水彩を背景としたディズニーアニメーション作品となりました。
伝説のサーファーへのラブレター
ナニの恋人デイヴィッドは、サーフィンが得意なスポーツマン。レストランで働きながら、夜はファイアーショーのパフォーマーとして活躍しています。そんなデイヴィッドとナニが、リロとスティッチと一緒にサーフィンをするシーンは、新たな家族の誕生を予感させます。
また、ハワイサーフィン界の英雄であり、五輪の金メダリストでもあるデューク・カハナモクが、ナニの部屋のポスターや、エンドクレジットの写真のなかの彫像(ワイキキビーチの実際の名所)としてフィーチャーされています。
フラダンスとメリー・モナーク・フェスティバル
ハワイといえばフラダンス。そのダンスを忠実に描くため、実際のフラダンサーを撮影して、アニメーションに生かしたそうです。また、挿入歌のひとつであるフラダンスの曲「へ・メレ・ノ・リロ」には、ハワイの名門校、カメハメハ・スクールのコーラス隊が参加。さらに、映画のクロージングで、スティッチとリロがフラを踊るステージは、ハワイで毎年行われている「メリー・モナーク・フェスティバル」という設定です。
リロ&ナニのラストネームの由来
リロとナニのラストネームは「ペレカイ」。犬のシェルターに保護されたスティッチを引き取る際に署名した書類からわかります。これは、ハワイに伝わる火山の女神ペレの名前と、ハワイ語で「海水」という意味のカイを合わせたものだそうです。
ハセガワさんのお店とは?
仕事探しをするナニが、求人広告を見て訪れたのは、"ハセガワさん"が経営するスーパー。これは実際に、マウイ島の町、ハナで有名なスーパー「ハセガワ・ジェネラルストア」がモデルなのだそうです。
『リロ アンド スティッチ』のなかには、このほかにも、ココナッツジュース、ウクレレ、ムームー、パイナップル・クッキー、カヌー、ヤシの木、火山、ウミガメなど、ハワイを感じられる要素がいっぱい。可愛らしいリロとスティッチとともに、ハワイの風を感じてくださいね。