第90回(2018年)アカデミー賞の衣装デザイン賞にノミネートされた、『美女と野獣』(2017)。今回は衣装デザインを担当したジャクリーヌ・デュランが語る、映画の象徴的ともいえるベルの衣装2点についての制作秘話をご紹介します。
実写版『美女と野獣』の制作にあたり、キャスト、およびスタッフは、1992年のアニメーション映画の魅力をリアルな世界のものへ作り変えるという、普通の映画制作とはちょっと変わった作業をすることとなりました。アカデミー賞受賞経験のある衣装デザイナー、ジャクリーヌ・デュランは、大人気アニメーションヒロインの一人であるベルを、どのように18世紀のフランスを舞台としたおとぎ話のヒロインへと変身させたのでしょうか。
緻密に作りこまれているベルの衣装にはどんな秘密があるのか、ベルが村で着ている青い衣装、そして映画の象徴ともいえる黄色いドレスの2着について、ジャクリーヌにお話をうかがいました。
「私たちは実写版制作にあたり、アニメーション映画が持つ要素を補強するようなことがしたいと思っていました。ただ実写化するだけでは、物足りない感じになるだろうと思っていたんです。そこで、新しいディテールを加えて、生き生きしたものにしたいと思いました。」
村で着ている青い衣装
「ベルは活発な女性であるということが考慮すべき重要なポイントでした。青い衣装はそれを表現できるものでなければなりませんでした。オリジナルのアニメーション映画と、監督とエマのアイデアという2つの要素をもとに考案しました。まず、ベルは実用的な靴を履くだろうと考え、ブーツにしました。スカートの下にブルマを履いているのは、スカートをはさむことができるようにです。これならどんな道でも歩けますし、丘を駆け上ることも、馬に乗ることも可能です。アニメーション版のように青いボディス(体にぴったりとした腰の上までの女性の衣服)は着ていますが、体の動きを制限するコルセットは着用していません。
それから、18世紀に使われていたポケットを付けています。フランスの地方で着用されていた服装を調べたところ、腰に巻いて使用する付属的なポケットがその時代に使われていたことがわかりました。本来は服の内側に隠して使うそのポケットを、ベルは外側に付けています。発明に使う道具を入れたり、ロバにあげるりんごを入れたり、本を入れたり、アクティブなベルにとっていかにも使い勝手の良いポケットとなっています。
彼女は村に暮らしていますが、そこに属している感覚は薄く、本を読み空想をふくらませたり、村の外に広がる大きな世界を夢見ているのです。」
黄色いドレス
「黄色いドレスは、とてもシンプルですが、同時にとても難しいものでした。アニメーション版において象徴ともいえるこのドレスは美しく、観客に愛されていましたから、それを変えたくなかったのです。つまりアニメーション版のドレスをそのまま作ったのです。ですが、実写版に組み込まれなければならない要素もありました。歴史を感じさせるセット、神秘的なお城、ベルにドレスをこしらえる「マダム・ド・ガルドローブ」の存在、そしてもちろんアクティブなベル、すべてがその要素でした。
18世紀のドレスを考えたとき、前側が開いているコートドレスが浮かびました。スカートにボリュームを出しやすいデザインだったので、ペティコートとサテンオーガンザを重ねて作りました。スカートの3層のフレアによって、ダンスシーンにより動きが出ると同時に、オリジナルアニメーション版のギャザーも表現されています。踊ったときに美しいドレスにすることが何よりも重要だという結論に行き着き、完成したこのドレスについて、エマは『まるで空を漂う雲のような雰囲気を持たせたかった』と話していました。」
「アクセサリについても神秘的なコンセプトの下に制作しました。金のイヤーカフスは彼女の耳の中から外側に沿って伸びているモダンなデザインで、ネックレスも、お城に息づいているものたちとの繋がりを表現したような有機的なデザインです。
アニメーション版の要素を、微調整し実写化する作業の中で、アニメーション版がいかに優れたものだったか、どれほど観客の心をつかんだ重要な映画だったかということを知ることとなりました。
ディズニーのプリンセスたちを通して、私たちはおとぎ話を現代風に見ることができます。人々はいつの時代もおとぎ話に夢中になってきましたし、実際、何世紀も廃ることなく伝えられ続けています。おとぎ話によって人々は何かに思いを馳せたり、違う人生を夢見たりすることができるのです。」
衣装のディテールに込められた制作者たちのこだわりを知ったうえで、本作品を堪能してみてくださいね。
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