『ジャングル・ブック』(2016)の制作裏話8選を、監督が自ら話してくれました。
この映画は、ラドヤード・キップリングの短編小説集『ジャングル・ブック』(1894)とディズニーアニメーション映画『ジャングル・ブック』(1967)の両方をもとにした改作であり、架空の舞台であるインドのジャングルに登場するすべての風景や場所、動物たちをCGIアニメーションで制作、主人公の少年モーグリだけを実写撮影した作品です。
ジャングルで育った少年モーグリ(ニール・セティ)は成長するにつれ、ジャングル内での自分の場所を模索しはじめます。唯一の人間である彼の脇を声の出演で固めるのは、ベン・キングズレー(バギーラ役)、ビル・マーレイ(バルー役)、イドリス・エルバ(シア・カーン役)、スカーレット・ヨハンソン(カー役)、クリストファー・ウォーケン(キング・ルーイ役)となんとも豪華。素晴らしい出演者たちが、最新のコンピューターアニメーションに生命を吹き込んだのです。
この作品で監督・製作・声優の3役を果たしたジョン・ファヴローが語った、制作のプロセスにおける裏話をお楽しみください!
【1】3D、オープニングのシンデレラ城の映像は、マルチプレーン・カメラシステムへの敬意として制作されました
『ジャングル・ブック』を制作するうえで、ジョン・ファヴローが自身のルールのひとつとして決めていたことを話してくれました。
「3Dをマルチプレーン・カメラの技術で撮るみたいに扱うんだ。ウォルトがいたらおそらくこうしたであろうと想像できる程度の仕掛けをしようってことだよ。やりすぎない程度にね」
マルチプレーン・カメラは、3次元的な奥行きの表現をするために使用される特殊なカメラで、静止画を何枚も撮ることなしに、カメラがセットの間を移動しているような表現をすることが出来ます。ディズニーはそのシステムの進化版を所有しており、短編アニメーション作品シリーズ『シリー・シンフォニー』の中の『風車小屋のシンフォニー』(米国公開1937年/DVD日本発売2004年)という作品で初めて使用し、その後『白雪姫』(1937)でも使用しています。
「『ピノキオ』(1940)や『バンビ』(1942)では、新しい技術としてマルチプレーン・カメラを使い、多くの場面が撮影された。スタッフたちはその技術を誇示したくて使っていたよ。それが当時の3Dだったんだ。僕らはそれを詳しく調べてみて、マルチプレーン・カメラに魅了されたよ。その仕組み、芸術性や精巧さについてね」
マルチプレーン・カメラの手法は、オープニングのロゴ映像についても取り入れられました。
「よし、オープニングのシンデレラ城のロゴ映像もそのやり方でいこう。最新ハイテクの表現じゃなく、手書きの風合いを持たせた、マルチプレーンを使ったセル画風ロゴだ」とファヴローが提案、さらに「お城の後ろの王国には、実写だったらどうだったのかを思わせるような要素を加えよう。背景に何があるかがわかるような感じに」というアイデアを出したのです。
【2】オープニングロゴ映像の最後には『バンビ』のショットが使われています
オープニングのロゴ映像の最後で、カメラはジャングルの生い茂った木々の中を後ろに引いていきます。ディズニーアニメーションクラシックの他作品からのショットだったということが明らかになっていく瞬間です。
「オープニング映像の最後に近づくにつれて、実写のような映像に移り変わっていくようにしたんだ。『バンビ』の映像を使ったよ」
【3】映画最後に出てくる本は、実物の本『ジャングル・ブック』のオリジナル版
映画の最後に、実物の本『ジャングル・ブック』が閉じられるシーンがありますが、そこにはまさに、締めくくる、といった意味が込められているようです。
「映画の最後に、いつもは倉庫に保管してあるオリジナル本『ジャングル・ブック』が出てくる。前作のアニメーション映画『ジャングル・ブック』では、この本が冒頭シーンで開かれて、挿絵からアニメーションになって映画が始まっていくんだけど、最後に閉じられていなかったことに気付いたんだ」
「だから、同じその本を持ってきて、同じ青いベルベットの布を背景に、本を閉じるシーンを撮ったんだ。前作へのオマージュのような、その章を完了したような感覚かな」
なんとも粋!ですよね。
【4】前作『ジャングル・ブック』の雰囲気を伝承
ファヴローはディズニーアニメの大ファンであり、ディズニー社の歴史についても知り抜いています。本作品の制作にあたり、前作『ジャングル・ブック』について、自身が尊重しようとしているものが明確にわかっていました。
「キャラクターアニメーション映画の中で、多くの点において、前作は最高水準のものだったよ。ディズニーには"ナイン・オールド・メン"と呼ばれる伝説的な9人のアニメーターたちがいて、情感的なキャラクターアニメーション映画で最高のものを制作していた。『ライオン・キング』(1994)を観ればそのアニメーションスタイルがわかるよね。『ズートピア』(2016)でもね」
「だから、今作はアニメーションの観点からとても重要な映画だったんだ。とは言え、映画的特性としては、人気キャラクターもののような劇的なものではないんだ」
ビル・マーレイが天才クリエイター集団と息を吹き込んだ熊のバルーをはじめとして、素晴らしいキャラクターアニメーションによる今作品『ジャングル・ブック』からは、制作スタッフたちが、前作にどれだけ鼓舞されていたかが伝わってきます。
【5】他のディズニーアニメーション映画からのインスピレーション
本作『ジャングル・ブック』がインスパイアされたのは、1968年日本公開の前作品だけではありませんでした。
「『バンビ』などの映画で、素材の扱い方を参考にしたよ。空気、火、水、大地など、様々な素材を使いたかったからね。『バンビ』では、いろいろな効果で季節や天気を表現していたんだ。『ライオン・キング』も参考になった。本作『ジャングル・ブック』全体を通して、こういった初期の映画のエッセンスを感じると思うよ。自然が舞台のストーリーだから、四季変化の効果は欠かせないし、それが見事に表現されたよ」
【6】映画のターゲット層の設定はディズニー古典作品を参考に
ファヴロー監督は、この作品が小さな子ども向けの一般映画ではなく、親の指導付きで誰でも楽しめる冒険映画であると強調します。映画に含まれる表現についての説明ナレーションは、ウォルト・ディズニー彼自身の声です。
「ウォルトだったらどの程度怖がらせるようなことをするか」
監督は、自身とスタッフに問います。
「ユーモアと音楽を、どうやってわくわく感とミックスするかという課題なわけだけど、『白雪姫』のターゲット層を考えてみようよ。映画好きな大人、10代の子たち、それから子どもたちだったじゃないか。ディズニーの伝統的作品はトーンを決めるのに参考になったよ」
『ジャングル・ブック』には激しい描写もありますが、やはり突き詰めれば誰もが楽しめる映画です。ウォルト・ディズニー映画が常にそうであるように。
【7】シャーマン兄弟の曲にマーク・ロンソンが新たに参加
オリジナルの『ジャングル・ブック』にいくつか曲を書いたリチャード・シャーマン(多くの分野でディズニーに貢献しているレジェンドの一人)が、今作品にも参加していますが、ファヴローが音楽においてもう一人頼りにしていたのが、グラミー受賞プロデューサーのマーク・ロンソンでした。
「僕らはカー役の声優スカーレット・ヨハンソンが歌う『Trust in Me』をレコーディングしたんだけれど、それをどう仕上げるか考えてなかった。それで彼に連絡を取ったんだ。僕はちょうどドキュメンタリー映画『Amy』を観たところで、その映画でマーク・ロンソンが『Back to Black』という曲をエイミー・ワインハウスとプロデュースしていて、それが60年代へ戻ったような仕上がりだったんだ。スカーレットのハスキーな声だったら何か面白いことができるって思ってね」
「マークに、スカーレットと『Trust in Me』をレコーディングしたんだけど興味ないかい?って連絡したんだ。録ったものを送ったら、ひらめいてくれたね!彼はまず、オーケストラ的な感じにしたいって言った。僕らはまだジョン・デブニーとレコーディングしていたから、オーケストラならあるよ。今譜面を書いてるところだ、って。それで彼が参加して仕上げたんだ」
【8】エンドクレジット映像はピクサー・アニメーション・スタジオが協力
エンドクレジットには、スペシャルサンクス、として、有能なピクサーのアーティストであるマーク・アンドリュースの名前が出てきます。彼は『メリダとおそろしの森』(2012)を監督、『ジョン・カーター』(2012)の脚本にも参加しています。
ファヴローによると、本『ジャングル・ブック』が開かれ、いろいろな種類の動物たちが中から出てくるエンドクレジットのシーンに、なんとピクサーが協力しているそうなのです。「本が開かれる最後のシーンでは、何を映すかピクサーがアイデアを出してくれたよ」
また、ピクサーの"ブレイン・トラスト"と呼ばれる制作討論会議が、この作品のストーリー制作に協力しているのだそう。
「彼らは本当に協力的だった。これ以上ないというくらいに。僕は彼らの大ファンだよ。"ブレイン・トラスト"は限られた人間たちの協力体制システムだから、まるでピクサー映画を作っているみたいだった。彼らと実際に映画を1本作ることになるかはわからないけど、この作品で彼らとコラボレーション出来たことは素晴らしいことだった。夢は叶うね」
ぜひエンドクレジットまで観て確認してくださいね!
制作裏話を知ったうえで『ジャングル・ブック』を観れば、制作スタッフたちのアイデア、秘めたオマージュなどがわかり、より楽しめるのではないでしょうか。ディズニーの古典性、現代性、そして最先端の技術を含めて感じられる本作品は、新しい古典と言えるかも知れません。
*本記事の作品公開年はアメリカ公開の年を記載しています

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