ディズニーでは、アニメーション映画とともに、子どもたちへ向けた絵本を、古くより制作しています。その作品のアーカイブは現在一般には公開されていませんが、今回はDisney DAILY読者のみなさまにその一部を特別にお見せいたします!
■ジョン・ヘンチ、アル・デンプスター作『ピーター・パン』(1953)
この本は、アーカイブの中でも最も古い作品です。
イラストを担当したのは、ディズニーレジェンドであるジョン・ヘンチとアル・デンプスター。
ジョンは映画『ピーター・パン』で美術監督を務めた経験を活かして、この本の制作に携わりました。
「ウォルトから何かを頼まれたら、前回よりもすごいものを見せなくちゃいけないからね」。
ジョンは、絵本をより良いものとするため、『ピーター・パン』の背景を描いていたアル・デンプスターに協力を依頼しました。さらに、アートディレクターとしてメアリー・ブレアを起用しています。
映画とは異なるメアリー・ブレアのデザインの雰囲気を保ちながら、絵本用のイラストを描くためには、『ピーター・パン』のストーリーを理解する必要がありました。その作業を二人はとても楽しんだと言います。
ジョンはページのレイアウトとイラストの下書きを担当。
また、背景の彩色も彼が行いました。グワッシュという不透明感のある水彩絵の具を用い、乾く前に重ね塗りをすることで、異なる色同士がぼんやりと混ざり合って見えるように工夫をしています。
アルはグワッシュよりもさらに不透明な絵の具のカゼインでキャラクターたちに彩色を施しました。
絵本上の小さなイラストでも、それぞれを見分けられるように細かなディテールまで描く必要があり、とても大変な作業だったとのことです。
本を読む子どもたちがより楽しめるよう、ジョンは多くのページに小さなイラストを描くようにしました。
小さくてもこのクオリティ!
このサイズでこの精密さを実現させるには、相当な技量が必要です。
ジョンとアルは非常に速いスピードで作品を制作しました。
その速さは1ページを平均3時間で完成させていたほど。レイアウト、下書き、背景の彩色に2時間、残りの1時間でその他の色塗りを終えました。
完成後、作品は印刷しやすいよう、写真のように半分にカットされました。
ジョンは、川や橋、都市の景観はアルと一緒につくった架空のものなのだと話しています。当時、第二次世界大戦が終わってから間もなく、戦後の景観が子どもたちにはあまり適していないと考えたためです。
この星たちは、ディズニーランドで“妖精の粉”のスタイリングを担当したアーティストが作成しました。
青で夜の雰囲気を演出したステキな一枚。
こちらはアルが担当したイラストです。彼の才能が一目でわかりますよね。
カゼインを用いているため、黄色や白が青色と混ざらず、キラキラとした光を描くことに成功しています。
■ロン・ディアス作『リトル・マーメイド』(1989)
これはディズニーの絵本を多く手がけたアーティスト、ロン・ディアスが描いた「リトル・マーメイド」です。
背景は水彩絵の具で手描きされていますが、キャラクターアートは映画から複製したものです。
■『ファインディング・ニモ』(2003)
このとてもオシャレな『ファインディング・ニモ』のデザイン画はすべて、グワッシュで手描きされています。
最終的にはスキャンされ、デジタルイラストレーションに加工されました。
ローレライ・ボーヴ作『トイ・ストーリー』(1995)
アーカイブには、絵本には採用されなかったイラストも保管されています。
これは、ディズニーのアートディレクターであるローレライ・ボーヴが2002年ごろに描いたバズ・ライトイヤーの未出版のイラストです。
こちらのイラストも、絵本には収録されていない貴重なものです。
■『ムーラン』(1998)のアートプール
アートプールとは、映画のワンシーンからなる一連のイラスト作品のことです。絵本や雑誌、アプリなど、様々なメディア展開へのアイデア出しは、これをもとに行われます。
優れたアートワークがディズニー社で働く人々にクリエイティビティを与え、キャラクターをより楽しむためのグッズやサービスが作られていくのです。
■『白雪姫』(1937)のアートプール
最後にご紹介するのは、2015年に制作された『白雪姫』のアートプール用の水彩画です。
アートチームは、1937年に公開されたクラシック作品の魅力を再現するため、最新のツールを用いるのではなく、絵の具で手描きすることに決めました。
テクノロジーありきで制作を考えるのではなく、その映画を最も素晴らしく表現できるツールを選ぶように気を付けていると、チームリーダーのケンは語っています。
映画とは違う魅力を持った絵本のイラストはいかがでしたか?
興味を持たれた方は、絵本を手に取ってみてくださいね。